製造現場のカーボンニュートラル、経営層主導で「成果」 人材育成は未着手

2021年11月19日 09:28

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記事提供元:エコノミックニュース

日本能率協会が「生産部門におけるカーボンニュートラル対応に関するアンケート調査」。経営層主導、部門連携を重視している一方、人材育成、スキルアップの具体化・体系化は未着手。

日本能率協会が「生産部門におけるカーボンニュートラル対応に関するアンケート調査」。経営層主導、部門連携を重視している一方、人材育成、スキルアップの具体化・体系化は未着手。[写真拡大]

 2020年から本格的運用が始まったパリ協定に沿って、世界の主要国は50年までのカーボンニュートラルの実現を宣言しており、脱炭素社会に向けた動きが加速している。日本政府も20年10月の臨時国会で総理大臣が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すこと」を宣言し、国内でも本格的なカーボンニュートラルの取り組みが始まった。カーボンニュートラルでは製造業での取り組みが重要となるが、政府の宣言から1年を経過した今、日本の製造業での取り組み・進捗状況はどうなっているであろうか。

 これに関して、日本能率協会が10月上旬に製造業の生産関連部門を対象として「生産部門におけるカーボンニュートラル対応に関するアンケート調査」を実施し、その結果レポートを11月5日に公表している。集計・分析の対象となった事業所数は製造業の169件である。カーボンニュートラルに向けた方針展開の状況を聞いた結果では、69.8%の事業所が「全社方針がある」と回答している。

 取り組むメリットについては、「顧客からの評価につながる」が81.1%、「地域・社会からの評価につながる」72.2%とCSR(社会的責任)を意識した回答が上位となっており、直接的な経済的メリットは感じていないようだ。課題については、「経済性と環境性の両立がはかれない」59.8%が最多、次いで「自社の技術開発が十分でない」43.8%、「サプライチェーンを巻き込んだ取り組みができていない」42.0%となっている。「見える化」については、「工場・事業所単位のエネルギー使用量の測定」で「実施している」が49.1%、「計画または検討」26.1%と検討までの合計で7割を超えている。一方データ活用は実施度合が低い。

 「体制・人材育成」に関する実施状況については、「経営層主導による推進体制がある」26.0%、「部門をまたいだ推進体制がある」21.3%、「取り組みに関する責任と役割を明確にしている」20.7%で2割を超えており、「検討」まで含めると各項目とも6割を超えている。また、その効果についても「効果がでている・でる見通し」が「効果がでていない」を上回っている。スキルアップでは、「スキル洗い出し」、「教育予算」、「OJT」、「OFF-JT」の調査項目全てで「実施」が6%未満、「検討」まで含めても4割程度だ。レポートでは総括コメントとして「次のステップとして、具体的なスキルアップの仕組みづくりが課題である」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)

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