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ソフトバンクGの相変わらず振幅激しい業況、マーケットはどう受け止める?
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8日、ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は、21年7~9月期(第2四半期)の連結決算(国際会計基準)が、最終損益で3,979億円の赤字だったと発表した。
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8月10日に発表した21年4~6月期(第1四半期)の最終損益が7,615億円だったから、3カ月間の振れ幅は軽く1兆円を越えている。第2四半期にファンド事業の赤字が8250億円となったことが最大の要因。中国への投資ウエイトが高いソフトバンクビジョンファンド(SVF)の投資先企業が中国政府の規制強化に見舞われて、株価を下落させた煽りを受けた形だ。
特に、SVFが20.2%の株式を保有し筆頭株主となっている滴滴出行(ディディ・中国配車サービス最大手)が、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に公開価格の14ドルを大幅に上回る16.65ドルの初値で上場されたことが第1四半期の追い風だった。終値の時価総額が684億9,000万ドルだったから、SVFの持分を時価総額に換算すると軽く1兆円を越えていた。
そのディディが中国政府によるIT企業への規制強化の影響をモロに受けて、第2四半期の間に40%を超える株価の下落を記録したから、ディディ株を保有するSVFの含み益が萎んで、挙句にSBGの第2四半期決算の足を引っ張った格好だ。
もちろん中国政府の規制強化によって影響を受けた投資先は他にもあるが、SBGにとっての「ぬか喜び」となった第1四半期と、「宴の後」の第2四半期との間の乖離はそれほど大きい。
21年3月期に叩き出した約5兆円の純利益を、「5兆円の利益が出ても1兆円の損失が出ても意に介さない」を豪語していた孫会長が、僅か半年後の第2四半期の決算を「真冬の嵐のど真ん中にある」とコメントすること自体が、SBGの振幅の大きさを物語る。
一般の事業会社であれば、一世を風靡するようなヒット商品に恵まれてから成熟期を経て、衰退に向かうまでの期間には10年単位の幅があってもおかしくない。だが投資会社としてのSBGには、投資先事態の業況変化のみならず世界の地政学的、政治的な影響をモロに受ける宿命がある。
折しもSBGは1兆円規模の自社株買いを発表した。孫会長が何よりも大切な指標とする純資産価値(NAV)で弾き出されたSBGの適正時価額が約1万3000円だとすると、6000円台に低迷する株価は不本意そのものと言える水準だろうから、マーケットの反応が注目される。
発表翌日の9日には10%程の高値水準を終日続けたものの、翌々日の10日には早くも半値近く下げた。マーケットが1兆円という自社株買いのスケールに物足りなさを感じているのか、1年間という期間の長さに倦んでいるのか、待望の自社株買いが始まったばかりなのに、SBGの頭上に広がる空が「雲1つない青空」とは言えそうもない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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