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27日、東京地検特捜部は、元日本大学理事の井ノ口忠男容疑者と、医療法人「錦秀会」の元理事長籔本雅巳容疑者の2名を起訴した。日大医学部付属板橋病院の建て替え工事を巡って、日大に2億2000万円の損害を与えた背任容疑でだ。同時に、特捜部は別件の医療機器調達についても、費用を約2億円嵩上げして日大に損害を与えた背任容疑で、勾留期限の27日に2名を再逮捕した。
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「日本大学事業部」は日大からの委託を受け、21年3月~5月にかけて画像診断装置7台と電子カルテ関連装置を調達する契約を、リース会社と交わした。この契約には、装置の調達に関与していない籔本容疑者が実質支配する会社に、約2億円の手数料を支払う契約が含まれていたことから、日大に架空の債務を負担させた疑いが浮上した。
また約2億円の手数料のうち約2700万円は、井ノ口容疑者の知人が都内で経営しているコンサル会社に送られる手筈だったが、コンサル会社もこの取引に関与していなかったため、日大が納入業者に支払った約2億円は、過剰なものだったと特捜部が判断しているようだ。
日大OBで名門として知られるアメフト部の主将を務めた経歴を持つ井ノ口容疑者は、田中英寿理事長の「特別補佐」と刷り込まれた名刺を最大限に活用して、10年1月に設立された「日本大学事業部」の自販機事業などを仕切り始めた。17年には日大の理事に登用されたものの、18年に日大アメフト部が引き起こした悪質タックル問題で辞任に追い込まれた。加害選手とその親に「(監督からの)指示はなかった」と証言することを強要し、従わなければ「日大が総力で潰す」と恫喝したという。
同年8月6日、田中理事長が発表した声明文では、「(恫喝は)断じて許されない、2度とあってはならない」と指弾されていたから、日大に於ける井ノ口容疑者の命運は尽きたと思われた。だが翌19年12月には「日本大学事業部」に取締役として復帰、20年9月には日大の理事に復帰するというトントン拍子の復活劇を演じて見せた。
日大にとっての痛恨事とも言える医学部付属板橋病院建て替え工事の背任問題は、井ノ口容疑者が「日本大学事業部」に復帰するのとほとんど同時に始まったことになる。19年に日大創立130年の記念事業としてスタートした、概算で1000億円とされる医学部付属板橋病院の建て替え計画も、井ノ口容疑者の眼には千載一遇のピンハネ・タイムとしてしか映らなかったかも知れない。翌年、日大理事に復帰して1年にも満たない期間のうちに、既に2件で合計4億2000万円もの過剰な負担を日大に押し付けていたからだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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