TBS、選挙特番の当落予測で「根拠説明ができるAI」を活用 富士通が開発

2021年10月26日 17:29

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Wide Learningによる分析結果の説明イメージ(画像:富士通の発表資料より)

Wide Learningによる分析結果の説明イメージ(画像:富士通の発表資料より)[写真拡大]

 TBSと富士通は25日、TBSテレビの第49回衆議院議員総選挙開票特別番組「選挙の日2021」の当選・落選の予測説明に富士通が開発したAI技術「Wide Learning(ワイドラーニング)」を活用すると発表した。2021年10月31日、選挙当日の当落速報で活用する。選挙当日の生放送でAIの分析結果を活用して当落速報を行う試みは、今回が国内初という(21年10月21日時点、富士通調べ)。

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 Wide Learningは、データを網羅的に組合せて分析し重要度の高い仮説を導き出すAI技術だ。通常のAIでは、データ分析の結論が提示されても結論に至った根拠が不明確なケースがあるが、本AIは人間でも解釈可能な仮説を用いて結論を出すため、理解や説明が可能となる。

 選挙の日2021では、TBSが保有する各候補者の過去選挙での経歴や個人の特徴、出馬する選挙区の情報、所属する政党や各政党の支持率と推移など、100以上の特徴データをWide Learningに入力し、分析させる。分析では特徴データの組合せを行い、その中から当落へ影響しうる仮説を抽出して予測を提示する。特徴データの数が50を超えると組み合わせは1,000兆通り以上となるが、約数秒間で計算できるという。

 Wide Learningは2018年9月に富士通総研が開発。開発の背景には、分析に大量データの入力が必要で、また結論だけが提示される従来型のディープラーニング(深層学習)ベースのAIへの課題感がある。課題解消のため富士通総研は、データ数が少なくても分析ができ、また説明可能な仮説をもとに結論を出すAIの開発を行った。

 Wide Learningの当落予測での活用検討は、解説者の知識やスキルに依存しない当落予測の実現を目指し、以前から行われてきた。2019年には、候補者の各種データを組合わせて仮説を抽出する「選挙当落判定フレームワーク」を構築。過去の選挙選(2019年参院選)で予測実験も実施し、結果として本AIから専門家に匹敵する当落予測が出ている。

 実証実験では、TBSから提供された調査データを使用。実施後にTBSの選挙本部担当者から「当落の決め手となる仮説を根拠付きで示すことができるのは選挙予測にも役立つ」、「より潜在的な仮説の発見も期待できる」との評価を得て、今回の活用に至っている。

 岸田総理大臣が就任して初の衆議院議員選挙となる10月31日。前哨戦とされていた静岡選挙区での参院補欠選挙で自民党候補者が敗北し、衆院選での混戦の可能性もある。その辺りの変動も含めて予測可能かなど、AIを活用した身近な予測の取組みに注目したい。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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