つみたてNISAで老後資金は大丈夫か 年利5%でも2000万円超が可能になることも

2021年9月13日 18:10

印刷

 コロナ禍で若年層の投資・貯蓄意欲が大いに高まっている。そんな中で注目を集めているのが、つみたてNISAだ。毎年40万円を上限に、投資総額800万円までの資産運用がすべて非課税となる税優遇制度である。

【こちらも】貯蓄意欲が高まる今 ローリスクでの資産運用も選択肢に

 そこで、毎年40万円を総額800万円までとなる20年間、コツコツつみたてながら資産運用した場合に、800万円の資産がいくらまで増額するかを試算してみよう。

 概算には、auカブコム証券の『つみたてNISAかんたんシミュレーション』で使用した。積立金は毎月3万円(年36万円)で年利設定が5%、これを20年間積み立てたケースの試算だ。

 試算結果は以下の通り。

 ・最終金額(累計積立額+増えた額):1,222万3,733円
 ・累計積立額(積み立てた金額)  :720万円
 ・増えた額(運用益)       :502万3,733円
 ・非課税メリット         :102万0,571円

 つまり、720万円の投資資金が20年間で約1222万円になり、1銭も税金がかからないのがつみたてNISAの特徴だということだ。

 さて、これでは厚生労働省が喚起した『老後資金2000万円の個人調達』にはとどかない。たとえ年間40万円の投資額にしたとしても、せいぜい1500万円ぐらいにしか資金は増額しない計算だ。

 ここであきらめるのはちょっと早い。実は一般にサービスされている『つみたてNISA用シミュレーター』の計算には問題がある。

 この計算では、初年度の40万円だけが20年間運用されていて、それ以降は毎年運用期間が1年づつ短縮される点に注意してもらいたい。つまり10年目の投資40万円は10年間しか非課税で運用されない。20年目の40万円に至っては、ほとんど非課税運用がなされないで満期になるのだ。

 ここで、楽天証券の説明を見てもらいたい。どの金融機関の説明グラフも一様に同じなのだが、各年度に投資した分が、その年より20年間の運用を非課税にするという内容になっている。例としてあげた楽天証券のサイトにあるグラフでも、それは同様だ。

 つまり、20年間連続で投資せずに数年に1度のペースで積み立てた場合でも、その積立年度が2042年までに行なわれれば、その後20年間の非課税運用が適用されるということだ。

 では、この条件で年間40万円(月約3万3333円)の積み立て投資を、連続20年間非課税運用した場合として、試算してみよう。なお、年利回りは5%(ローリスク設定)と想定する。

 ・40万円 × 1.05(年利回り率)の20乗 = 約106万1319円
 ・約106万円 × 20年間 = 約2120万円

 40万円の投資で年利回り5%を得ると仮定すると、20年間で約106万円まで増額される。そして、このセットを20年間続けて「20セット」積み立てられることで、106万円の20倍、合計2120万円もの資産に膨らむ計算だ。運用益はざっと1320万円にも及ぶ。

 少々分かりづらい説明だったかも知れない。だが結論としては、毎月3万3333円の積み立てが可能であれば、20年間連続で積み立てることで、将来の老後資金2000万円を用意できるというわけだ。

 例えば現在40歳の人がこの条件でつみたてNISAを始めたとして、20年後の60歳の年に、1年目に投資した40万円が100万円強の資産として現金化できる。次の年は2年目に投資した額の運用結果を受け取り、さらに翌年は3年目に投資した額を同様に現金化していく。こうして20年間に渡り、毎年100万円強を年金のように受け取ることが出来るのだ。

 もちろん、ここで設定した年利5%というのは、あくまで想定だ。年によっては暴落もあり、一時的に資産が減ってしまうこともあるだろう。20年間連続で投資を行なうことはできても、引き出しのタイミングというのは、必ずしも毎年連続して、と言うわけにはいかない場合もある。

 一時的に多くを引き出す年があったり、まったく引き出しを見送るという年もあるだろう。そういったリスクや変動は考慮する必要がある。

 ただ同じ積み立て方法を銀行預金で実行しても資産はほとんど増えない。例えば金利を0.02%として毎月3万3,333円ずつ20年間複利で積み立てたとしよう。それでも利息は20年間で1万6千円にも満たない。ここからさらに税金が引かれ、手元に残る利息は1万3千円ほどだ。

 こうしてみれば、初心者の資産運用としてはつみたてNISAは、十分に検討手段となり得るだろう。(記事:TO・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事