霞ヶ関キャピタル Research Memo(3):2つの独自のビジネスモデルを展開(2)

2021年5月18日 15:03

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記事提供元:フィスコ


*15:03JST 霞ヶ関キャピタル Research Memo(3):2つの独自のビジネスモデルを展開(2)
■霞ヶ関キャピタル<3498>の会社概要

2. 事業内容とビジネスモデル
事業内容については、「不動産コンサルティング事業」と「自然エネルギー事業」の2つのセグメントに分類して開示している。2021年8月期第2四半期現在では、不動産コンサルティング事業には物流施設開発、アパートメントホテル開発、保育園開発、海外投資、ショッピングセンターなどの事業が含まれ、売上高で全体の93.4%、営業利益(全社費用控除前)で同96.3%を占めている。一方、自然エネルギー事業は主として太陽光発電事業を展開しており、売上高で同6.6%、営業利益で同3.7%を占めている。

2021年8月期下期からは新規事業である物流施設開発事業等が本格稼働するため、不動産コンサルティング事業の比率が更に拡大する見通しである。同社は投資家にとって魅力のある不動産投資商品を提供したいと考えていることから、柔軟な戦略やビジネスモデルとそれを実行する十分な人材と資金の活用により、今後も既存の事業分野にとどまることなく、事業環境の変化に対応して新たな事業へのチャレンジを続けると弊社では見ている。

同社の大きな特徴は、「戦略的コンサルティング型デベロッパー」と「成果報酬志向型ファンドマネージャー」という、他に例を見ない独自のビジネスモデルを構築していることにある。「戦略的コンサルティング型デベロッパー」とは、同社の持つ企画力・ソーシング力(投資対象となる案件の調達力)、ストラクチャリング力、ファンドマネジメント力を活用することで、不動産を保有しないデベロッパーと定義している。また、「成果報酬志向型ファンドマネージャー」とは、アップフロントフィー(ファイナンスのアレンジメントに対し、貸手に対して融資総額の一定比率で支払われる手数料)によらない、ストック収入による安定収益基盤と成果報酬によるアップサイドの両立を図ることと定義している。このユニークなビジネスモデルによって、高収益と財務の健全性を実現している。

(1) 戦略的コンサルティング型デベロッパー
まず、不動産を保有しない「戦略的コンサルティング型デベロッパー」であることが、同社の大きな特徴である。一般的に、不動産を事業対象とする企業にとって、事業機会や収益機会は大きく分けて3段階ある。第1ステージは用地を仕込み、適切なプランニングをして売却し付加価値を得ること、第2ステージは建物を造り開発利益を享受すること、第3ステージはリートやファンド等のなかで運用収益を享受することである。従来型のデベロッパーの収益モデルは、第1ステージと第2ステージを合わせて行い、2年~3年かけて開発・販売をして利益を上げる。一方同社は、3つのステージのすべてに関わり、時間の概念を取り入れることによって期間収益率を高めるという方法にフォーカスしている。

すなわち、第1ステージではデベロッパーとして用地を取得し保有するが、その後最適なプランを付けてパッケージにする。第2ステージ以降は開発ファンドの投資家や開発パートナーに販売してオフバランス化し、ファンドマネージャーとして事業に関わることで、すべての段階で収益機会を享受できる仕組みになっている。第1ステージの保有期間は平均6ヶ月間程度と短く、その繰り返しによって短期間で収益を回収することができる。オフバランス化によってリスクを回避しながら急成長を続け、高い収益率やROEを実現できるという、ユニークなビジネスモデルを構築していると言えよう。

こうした独自のビジネスモデルを可能にしているのは、同社が第1に企画力とソーシング力(投資対象となる案件の調達力)、第2にストラクチャリング力、第3にファンドマネジメント力を兼ね備えているからである。企画力だけでは案件は前進しないが、企画力がなければソーシングもできない。ストラクチャリング力には経験が必須であるが、同社には実績を持つ社員が大勢いることが強みである。ファンドマネジメント力は、物件の価値を高めるアセットマネジメント力とマーケットとの対話力が合わさることで可能になる。以上の3つの必要条件が揃うことで、同社の戦略的コンサルティング型デベロッパーとしての機能が可能になっている。

(2) 成果報酬志向型ファンドマネージャー
同社のもう1つの特徴である「成果報酬志向型ファンドマネージャー」としては、ストック収入による安定収益基盤と成果報酬によるアップサイドの両立を図っている。同社は成果報酬を得るが、不動産を取得しただけでファンドマネージャーが高額な利益を得るようなアップフロントフィーは得ない仕組みとしている。同社では、このような不動産ファンド業界に定着している慣習を撤廃し、同社がファンド投資家の期待利益を実現した後に、超過した利益を得るのがあるべき姿と考えている。

同社は、将来にわたって着実にAUM(Assets Under Management:運用資産)を積み上げることによって、ファンド事業の収益拡大を図る計画である。実際、コアファンド運用中・開発ファンド運用中・開発予定を合計したプロジェクトパイプラインは、2019年8月期末の280億円から2021年8月期第2四半期末には673億円へと増加しており、全体の8割程度は開発予定が占めている。また、安定的な収益の確保に向けて、ファンド事業の体制整備も実施している。具体的には、2019年9月に霞ヶ関アセットマネジメントを設立、2020年3月には同社が第二種金融商品取引業および投資助言・代理業登録、現在は霞ヶ関アセットマネジメントにおいて総合不動産投資顧問、第二種金融商品取引業および投資運用業のライセンス取得に向けて活動中であり、REIT組成を目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)《YM》

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