ヨーロッパのビッククラブが集合する新リーグ構想、泡沫の夢と消える

2021年4月22日 16:21

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 ヨーロッパのビッククラブが主体となって発足する、と発表された「欧州スーパークラブ」(ESL)構想は、国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)、未参加クラブ、数多くの関係者を巻き込んだ大騒動の挙句、わずか2日ほどであっけなく瓦解した。

 当初参加を伝えられたクラブは、スペインのレアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリード。イングランドのマンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、アーセナル、リバプール、チェルシー、トットナム。イタリアのユベントス、ACミラン、インテルで、合計12クラブ。そこにドイツの3クラブが参加して、15クラブが降格なしの特権を得る。更に勝ち上がった5クラブを加えてリーグ戦を行うという構想だった。

 いずれも著名なビッククラブが参加を表明した背景には、コロナ過でスタジアムでの入場料収入が途絶えた経済的な苦境がある。今までスタジアムに集い、入場料と飲食・物品費を試合ごとに使ってくれていた何万人ものサポーターを、コロナ過のため集客することが出来なくなった。計算できる収入はテレビ(ネットを含む)の放映権料だけだが、現行のシステムではUEFAが窓口となって、加盟している55連盟に配分し、個別のクラブは連盟から配分される。

 元々のパイが小さい上に、配分割合を急に変更することも出来ないから、高額年俸のスター選手を多く抱えるビッククラブも、降格目前の弱小クラブも、受け取る金額に大きな差は生じない。現状はビッククラブにとりわけ厳しい環境にある。ESLに参加を表明したクラブが、いずれ劣らぬ名門ビッククラブだったのにはそんな訳がある。

 ESLの初代会長にはレアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長が就任し、ユベントスのアンドレア・アニェッリ会長は既にUEFAの理事を辞任していたという周到さだったが、周囲の反発は当事者の想定を遥かに超えるものだった。

 FIFAやUEFAから即座に激しい反発の声が上がったのは当然にしても、有力クラブの監督、往年の代表選手、OBの有名人、サポーターはもちろん、英国のボリス・ジョンソン首相からもレッドカードを突き付けられた。

 周囲の反発を決定付けたのは、構想の背後にいた米JPモルガン銀行が35億ユーロ(約4550億円)を提供して、15の設立クラブに分配されることが分かったことだろう。「旨い話」に参加できない人たちを、激しく刺激することになってしまった。

 参加を予定していたクラブの反応も素早かった。マンチェスター・シティ、チェルシーがESL構想からの離脱を表明すると、あっという間に他の8チームが亀の子を散らすかの如くに離散し、訳アリのレアル・マドリードとユベントスが難破船の沈没を見守ることになった。

 もはや打つ手のないESLリーグは「現在の状況を受け止め、適切なステップをもう1度検討して計画を練り直す」という声明を出したものの、現実的に再出発は有り得ない。引っ込みのつかないレアル・マドリードとユベントスの行動に多少流動的な部分があったとしても、面子を失った代表者を黒子に回して復帰するしかないだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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