年間110万円の贈与控除で親の生命保険を 節税効果が高い相続方法とは

2021年4月13日 08:16

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 2015年1月1日より実施された相続税の基礎控除の減額によって、その年の納税者数が前年と比較して倍増したとのデータがある。つまり、改正前では課税対象とならなかった相続額での納税が大幅に増えたことを意味している。

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 これは、改正前の基礎控除が『5,000万円 + 1,000万円×法定相続人の数』で計算されていたのに対し、改正後は『3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数』と控除額ベースが低下したことに起因する。すでに知っている人が多いことであるが、この事象に合わせて暦年贈与など、生前贈与の実数が上がっている事実を伝えておきたい。

 年間110万円まで非課税となる暦年贈与、2,500万円まで贈与税がかからない相続時精算課税制度(相続時に合算で課税する)、相続対象者に居住用の不動産を贈与、直系卑属にマイホーム購入の頭金を贈与するなど、節税効果の高い財産譲渡の方法が実行される傾向が強くなっているのだ。

 つまり、限りある資産・財産を有効に後継すること。これも資産運用の要点なのである。これらの中で比較的実践しやすい贈与について注解を加えておこう。それは年間110万円までの非課税枠を利用して、子に自分の生命保険を契約させる方法である。

 まず暦年贈与だが、年間110万円以下であれば無税で受け取ることができる。受取先は1人でも複数人でも関係ない、とにかく1人110万円までなら非課税で税処理される点に注目したい。

 そこで親がある程度の現金や預貯金を蓄えていて、相続での課税が心配だという場合、早い時期から非課税枠内の贈与を繰り返すと多額の相続が無税で行なえる。20年間で2,200万円、30年間なら3,300万円を1人に無税で譲渡ができるのだ。

 贈与する相手が複数いれば、その人数に応じて譲渡の金額が倍増する為、効率の良い継承手段だと言えるだろう。ただし、暦年贈与を税務署に認めさせるには、年間110万円の贈与がそれぞれ独立した行為だと証明する手続きが必要だ。仮に1,100万円を10年間で分割贈与したと判断されれば、1,100万円に応じた贈与税が課税されてしまう。そこで毎年贈与契約書を作成し、贈与は単発で110万円以下だった事実が証明できると良い。

 このように暦年贈与の形を整えつつ、そのお金で贈与者である親(父でも母でも問題ない)に、満期保険金や解約返戻金のある貯蓄型生命保険に加入するのだ。すると、親は自分のお金で保険料を支払わずに死亡保障が確保でき、かつ払込保険料を超える死亡保険金か満期金を相続させることが可能だ。

 ここが節税における重要ポイントである。子が親に生命保険を掛け、保険金を子が受け取る場合、これは相続税ではなく一時所得税が課税される。

 なお、所得税額は『(保険金 - 払込保険料の総額 - 50万円)÷ 2』の計算式で課税所得額が決定されるため、同額の相続税額よりも少額となるケースが多い。なぜなら、親から無税で贈与されたお金で払い込んだ保険料全額が所得控除として計上できるからだ。さらに基礎控除50万円が減額され、課税所得額はさらに半分で決定するので、納税額は大幅に減額されるのだ。

 かりに満期保険を受け取ったとしよう。払込期限までに保険料を3,300万円支払って、3,500万円の満期金(貯蓄型生命保険の満期金は、払込保険料に若干の利回りがプラスされた額となる)を受け取るならば、課税所得額は75万円とわずかな額で計算される。この額の所得にかかる税るつは5%なので、子は3500万円の現金を親から相続して、たった3万7500円の税金を支払うに過ぎないのだ。

 さらに毎年の保険料が、子の所得税から控除される。生命保険料控除は上限で6万8000円までが直接納税額から控除となる。これも節税効果としては高いものと言えるだろう。

 仮に大きな預貯金を財産として保有している場合、この方法を複数の子に実行させることで、それぞれの子なり孫への相続が、低額の税金で実施できるだろう。このように贈与の控除を有効活用することで、資産運用と財産の継承が効率よく実行できることを確認しておいてほしい。(記事:TO・記事一覧を見る

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