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黒岩知事と小池知事とのやり取りから、新聞の凋落を連想 (上)
世界数十カ国の大学や研究機関が参加して、各国国民の意識を比較する「世界価値観調査」がある。国民の意識を推し量る調査と捉えられているが、17年~20年にかけて行われた「(国内の様々な)組織・制度に対する国民の信頼度」をテーマとする調査で、日本国民についての興味深い結果が報告されている。
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新聞・雑誌・テレビに対する信頼度が60%を超えて、先進国の中では突出して高いことだ。英国が新聞・雑誌で10%台、米国が新聞・雑誌・テレビで20%台、ドイツ・フランス・イタリア・スウェーデンが新聞・雑誌(ドイツはテレビも)が30%台なのだから、異様とも言える高さである。逆に言うと、先進国の国民は相当冷めた目と耳で報道に接している、ということになるだろうか。
そんな高い信頼度を有している筈の、メディアの一角である新聞の発行部数が、20年10月には合計で3500万部となった。3年前と比較すると700万部ほどの減少だ。しかも減少率は、対前年比で17年が2.7%、18年と19年が5.3%、20年が7.2%だから、減少スピードに加速度がついたような感じだ。
新聞・雑誌・テレビに対する信頼度が高いのに、新聞の発行部数が大幅に減少している矛盾をあれこれ想像することは可能だが、簡潔な言葉で信憑性のある説明をすることは難しい。新聞・雑誌・テレビと一括りにされているところに問題があるかも知れないし、アンケートには「新聞を信頼したい」という期待が反映されているのに対して、信頼できない実態に「失望」して購読を止めているのかという深読みもあるだろう。
例えば、小池百合子東京都知事と黒岩祐治神奈川県知事との間で交わされた遣り取りが、注目されている割には新聞紙上で報じられることが少ない。
黒岩氏によると、3月7日に期限を迎える緊急事態宣言の扱いに関心が集まっていた3月1日に、「延長せざるを得ないでしょう」という趣旨の連絡を小池氏から受けた。黒岩氏は「もう少し数字を見たいのでちょっと待って欲しい」と返答したという。
翌2日に、小池氏が「4知事(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)でコロナ担当の西村康稔経済再生担当大臣と面会しませんか」という提案と共に、西村氏に渡す文書案を見せられた。その文書には、4都県の知事が連名で「緊急事態宣言を2週間延長して欲しい」旨の要請が記載されていた。黒岩氏は「他の知事(埼玉県・千葉県)と話をしていないが、みんな大丈夫(賛同しているのか)かな?」と訊くと、小池氏側は「大野元裕埼玉県知事と森田健作千葉県知事は賛成している」と答えたという。
その後、黒岩氏が直接大野氏と森田氏に確認したところ、2人とも「黒岩さんが賛成するからと(都側から)聞いたので、同調することにした」と返事した。その時点で、黒岩氏は小池氏側の思惑を察して「(4知事連名で、西村氏に緊急事態宣言の延長を要請することは)無理だ」と立腹して、西村氏との面会は流れた。
翌3日に開催された4都県知事のオンライン会議では、黒岩氏が小池氏に「こんなことでは信頼関係が薄れるから駄目だ」と抗議したところ、小池氏から「先走ってごめんなさい」と謝罪があったという。
以上は、7日に放送されたフジテレビの「日曜報道 THE PRIME」で、黒岩氏が語ったことを纏めたものだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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