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ビジョンファンドの投資先に信用不安発生、ソフトバンクGに注目集まる!
ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の投資先である、グリーンシル(英金融サービスグループ)の信用不安が表面化した。グリーンシルに対しては、SVFが19年5月に8億ドルの初回投資を行い、同年10月には6.5憶ドルの追加投資が行われていた。
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グリーンシルはノンバンク債券などの発行で集めた資金を、企業の運転資金へ振り向ける金融サービスグループとして知られていた。当時、同社のレックス・グリーンシル最高経営責任者(CEO)は「金融市場において、テクノロジーを駆使して、企業の低コストでの資金調達を支援する」と意気込みを語っていた。
CEOの総論的な説明だけでは事業内容を把握することは出来ないが、率直に言うと「売掛債権の買い取り業」である。企業が取引先に商品やサービスを提供して、同時に代金を回収出来れば資金繰り上の問題は生じないが、現実の経済活動においては余程信用のない先に対する稀なケースと言える。通常は、一定期間(1カ月単位が多い)の売上をまとめて請求し、取引契約に定められた数カ月後の決済日に支払いをする。
例えば、仕入れ条件で取り決めた決済期日が90日後で、売上の回収期日が60日後の場合、不良債権が発生しなければ、資金繰りは潤沢だ。逆に、仕入れの決済が60日後で売上の回収が90日後の場合には、常時資金繰りに苦しむ。売上が急増した場合や、不良債権が発生した場合には、資金繰りは更に逼迫し、資金力がなければ行き詰る。
売掛債権を買い取って、金利分を控除した資金を供給することは銀行が行う業務の1つだが、全ての事業先が銀行に債権を買い取ってもらえる訳ではない。信用情報が劣っているなど、銀行の取引基準に抵触する事業先が存在することも事実で、こうした場合には、金利は高いが肩ひじ張らずに付き合える、グリーンシルのような民間の金融サービス会社が重宝される。
銀行や金融サービス会社が買い取る売掛債権は、取引先に対して発行された請求書を合計して算出されるが、中に紛れ込んだ「架空の」請求書を見分けることは至難だ。売掛債権を買い取ってもらう企業が粉飾行為に及んだ場合、次第に架空の数字が膨らんで自転車操業状態になり、やがて破綻することは珍しくない。銀行が取引先を選別する最大の理由がここにある。aaa
今回、グリーンシルの経営危機に際して遠慮がちではあるがセットで報じられているのが、英国の鉄鋼商社であるリバティハウスと、主宰者のインド生まれサンジーブ・グプタ氏だ。
グプタ氏は16年4月に、損失の拡大に喘ぐインド製鉄大手タタ製鉄の英国事業買収に名乗りを上げたり(頓挫)、20年10月には、17年にタタ製鉄と欧州鉄鋼事業統合で合意しながら、市場の寡占を嫌う欧州委員会の反対で涙を飲んだ独ティッセン・クルップに対して、鉄鋼事業の買収提案をするという派手な動きを繰り広げていた。
リバティハウスに対して、ドイツのグリーンシル銀行子会社が貸し込んでいた疑いにより、独金融監督当局が昨年調査に乗り出していたと報じられている。
SVFは20年末に、グリーンシルへの投資金15億ドルに対し大幅な減損処理を実施済みで、今後は追加措置によって全額の償却も視野に入れていると報道されている。既に損失処理は終わった状態だ。2月8日の決算会見で、20年4~12月期に3兆0551億円の純利益があったことを「物足りない風に」発表したSBGの孫社長にとって、1500億円程度の損失は痛くも痒くもないと強がりたいところだろう。
懸念があるとすれば、損失が現実の現金の消滅であるのに対して、利益が「含み」益であることだろう。どんな時でも、ソフトバンクグループ絡みの話題には、世間の耳目を集める吸引力がある。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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