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「医療壊滅」を叫ぶ日本医師会中川会長に向かう、「民間病院には入院余力がある」というブーメラン!
日本医師会の中川俊男会長は、新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)に強い危機感をお持ちだ。昨年11月18日の記者会見では、国民に対して感染拡大地域への移動自粛を求め、直近に迫った3連休を我慢して欲しいと述べた。また、医療崩壊防止のため「1人1人が感染防止に取り組むこと」ことの重要性を呼びかけていた。
緊急事態宣言が11都府県に拡大された後の1月13日の記者会見では、「国民と危機感を共有して感染防止につなげたい。このままでは医療崩壊から医療壊滅になる。欧米のような感染爆発にならないように、全国的な緊急事態宣言も選択肢の1つだ」と、”医療壊滅”という新語まで駆使して危機感を表現した。
中川会長は、「全国的に既に医療崩壊は始まっていて、心筋梗塞や脳卒中の患者の受け入れ先が見つからなかったり、ガン手術の延期が現実になっている」と言う。
医療崩壊が迫っているということに関しては、既に様々なチャンネルから情報が乱れ飛んでいたから、医療者の頂点にいる人の話と聞けば「日本の医療はそんなに脆弱だったのか」と深刻になってしまうところだが、様々な指標を比較しても日本の医療体制や設備が世界のトップクラスに位置していることは間違いない。
充実した医療体制や設備を持ちながら「医療崩壊」が喧伝されるのは、折角の医療資産が適切に活用されていないところに問題がある。
2014年現在の日本の医療機関数が8442であるのに対して、公立病院はおよそ20%である。その公立病院に対して、厚生労働省が昨年6月に定めた新型コロナ緊急包括支援事業の実施要領をもとに指定した重点医療機関は、全国で899施設・2万1405床である。日本全体の医療キャパシティーの1割強に相当するが、公立病院だけを考えると半数を超える。
日本の医療法では民間病院に対して国や自治体は、命令することが出来ないから、重点医療機関に指定することも出来ないのだ。「命令」する法的根拠がないために、民間医療者の「良識ある行動」を秘かに期待するしかない。
新型コロナの患者と向き合う限られた病院は切迫した状況が続いているため、民間医療者を束ねる日本医師会に寄せられる期待は大きい。新型コロナ患者の受け入れに限らず、施設や設備の融通、医師や看護師の一時的な派遣や応援など、考えられる様々なことを取捨検討しているものだと期待するのは当然だ。
国民の不安を一掃するほどの潜在力を有しながら、日本医師会の中川会長が現状を「医療壊滅」と、突き放した言葉で表現する真意を訝る人は多いだろう。
「医療崩壊」ならばなんとか細々と医療行為が続いているイメージだが、「医療壊滅」では日本中の医療機関が全て機能マヒということになる。危機感を表現するために、そこまで強いメッセージを発信する意図が理解できない。いくら日本医師会が利益団体だとしても、コロナ過の混乱に乗じてその存在感と実利の向上を追求して会員の支持を集め、中川会長体制の基盤確立を狙っているとしたら、日本にとっては不幸なことだ。
感染症特措法の改正案では、知事の命令に従わない事業者に行政罰を課したり、感染者が入院などに応じない場合には刑事罰を課すところまで踏み込んできたが、そこまでするのであれば、民間の医療事業者に対して緊急時の患者受け入れ命令と、罰則が設けられなくてはバランスが取れないだろう。
日本医師会はコロナ過という災いに対して、民間医療の体制に弾力性と柔軟性を生み出して前向き対応する役割を担って欲しいものである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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