新型コロナは、そんなに怖いか? バランス感覚とイマジネーションの欠落がもっと怖い

2020年12月19日 16:43

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 新型コロナは、自覚症状がなくても、感染初期でPCR検査によって陽性や陰性の判定が出来ない時期にも、他者へ感染させるという特性がある以上、「自分も周囲の人も感染者かも?」という気持ちを持って行動することが原則だ。

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 自分が感染することを防ぐため、他の人を感染させないため、マスクを着用することや手洗い、うがいを励行して3密を避けることは、日本人が生活する上でのルーティンになった。

 今までの生活習慣と多少乖離のある動作だから、戸惑いがあるのは当然だが、今年は例年と比べるとインフルエンザの患者が非常に少ないという情報を聞くのは、正直嬉しい。日々の努力が”無駄ではない”と感じられる瞬間だ。

 新型コロナの感染判定をするPCR検査には、陽性・陰性の他に間違って陽性に分類される場合と、間違って陰性に分類されることが避けられない。おまけに感染初期の段階では判別できないケースが珍しくないようだから、PCR検査の結果に一喜一憂することは考え直すべきだろう。

 日本医師会の中川俊男会長は11月18日の会見で、「感染拡大地域への移動自粛」を呼びかけ、「我慢の3連休」にしてくれと訴えていた。その際、感染者の増加と「Go To トラベル」との関連について、「エビデンス(証拠)はないが、きっかけになったのは間違いない」と、根拠を示さないで決めつける発言もしている。発言が独り歩きすることを考えると、もっと慎重な発言をすべき立場ではないだろうか。

 「我慢してくれ」と口にする人達の多くが口にするのは、「経済を取るか、人命を取るか」という二者択一だ。生命を人質にされて「経済が大事だ」と、口に出来るような向こう見ずもいないだろうから、一方の回答しか出来ないような設問の仕方は不適切だ。

 しかも実態を見ると自殺者は、1年を通して毎月千数百人という数に上り、今年は11月末時点の累計が既に1万9101人を数えている。7月から増加傾向が顕著で、10月は2158人だった。

 ほとんど同時期の新型コロナの(関連死を含めた)死亡数が2397人(12月7日現在)なのだから、バランス感覚のない発言であることは明白だ。自殺の増加が新型コロナによる経済的な困窮と決めつけることは出来ないが、それが太宗を占めているのは自明のことである。

 飲食業界に限らず、観光業界やその他の業界も、今春から断続的に続けられている時短営業や営業の自粛に疲弊しきっている。遣り繰りも金策もやれることは全てやって、やっとの思いで年末を迎えた事業者も多いだろう。

 新型コロナに商売のチャンスを取り上げられた事業者の中には、絶望的な思いで事態を見守っている人たちもさぞかしと思われる。経済的な行き詰まりの裏側には人命の危機がある、というイマジネーションが余りにも乏し過ぎるのではないだろうか。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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