コンビニ3社が公取委に回答、「タテマエ」だらけの内容に「独禁法」の出番はあるか? (1)

2020年12月3日 18:21

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 コンビニの大手3社は11月30日、フランチャイズチェーン(FC)加盟店との取引で改善すべきとの指摘を受けていた5つの項目について、公正取引委員会(公取委)への回答内容を公表した。

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 フランチャイズチェーンの本部と加盟店は、それぞれ固有の守備範囲の中で持てる力を出し合って、得られた利益を適正に配分することで成り立つ”運命共同体”の筈だ。ところが、本部が強大な力で加盟店の犠牲を強いている、という見方が広がり社会問題化した。このため、公取委が加盟店へのアンケートを実施し、浮き彫りになった問題点に関する解決策を、11月30日までに提出するよう求めていた。

 公取委が殊に問題視した5項目に対して、コンビニ本部はどんな回答をしたのか?

 1つ目は、加盟店を募集する際に説明された収支予想と、開店した後の実際の収支状況に大きな乖離があることを問題視するものだ。

 概して畑違いの職種から加盟店のオーナーに転身する人は、利用客の1人としてコンビニ店舗の様子を外から見ていた素人に過ぎない。そんなオーナー候補が独立を決心する重要なポイントは、「努力に見合った収入が期待できる」ことだ。説明会で本部の担当者が新規オーナーを獲得するために”話を盛ったり、都合の悪いことは流す”ことは十分想定されることで、暫くして現実に直面したオーナーは、本部に不信感を抱くことになる。

 1つ目の項目に対する各本部の回答を簡記すると、セブン-イレブン(セブン)が「説明資料の一部を映像化して内容を統一する」、ファミリーマート(ファミマ)が、「収益予想を最初に説明する」、ローソンが、「収益を上げている店の事例を紹介する」だ。

 コンビニ本部の回答は3社とも、オーナーが抱く不信感に誠実に向き合っているようには感じられない。誰が立案しても、予想が外れることは避け得ないから、問題は開店後の収支実績が予想を下回った場合に、打つ手があるかどうかだ。本部が開店後のリスクヘッジを示さなければ、オーナー予備軍の疑心暗鬼は募るばかりだろう。

 2つ目と3つ目は、本部から強要に近い形で仕入れを求められていることと、値引き販売の制限だ。本部にはコンビニ経営のノウハウが集約されているという大前提があるから、加盟店が販売する商品はほとんど全てが本部を経由して納品される。加盟店が仕入れ先と直接的な交渉をすることは有り得ないので、仕入れ価格はお仕着せのままだ。

 本部はその上で、「品切れになって、販売機会を失わないように、多めに仕入れする」ことを求めて来る。本部の担当者の中には、オーナーに対して日々売れ残って廃棄する金額の目安を示して、強要するかのように仕入れを求めて来る者もいるようだ。

 甚だしい例は、本部担当者がオーナーに無断で発注した事例が報道されていたことだ。こうした事態が発生する原因は”廃棄ロス”を加盟店が被っているからだ。本部の腹が痛まないシステムがある以上、加盟店に実力以上の仕入れを求めるモチベーションは残る。

 コンビニ本部の回答は、セブンが「仕入れシステムを社員が利用できないように変更した」、ファミマが「操作履歴が残るようにシステムを変更した」で、ローソンは「強制を禁じるルールを徹底する」だ。

 「本部担当者が加盟店の仕入れシステムに係わることが出来る」こと自体が言語道断なのだから、セブンの回答にはふてぶてしさすら感じられる。3社の回答に通底しているのは、加盟店により多くの仕入れを期待する本部の思惑が色濃く残っていることだ。

 今までは廃棄が迫った商品を、値引き販売することすら許されていなかった。さすがに最近は値引き販売が出来るように制度を変更しているようだが、手続きが面倒臭くて複雑だから利用できないという声もある。”タテマエ”だけの制度変更であれば意味はない。

 両項目に対するコンビニ本部の回答は、”タテマエ”ありきとしか思えない。加盟店との契約期限満了時に、契約更新の可否を本部の思惑で決定できるところに、根本的な問題がある。オーナーは建物や設備に多額の投資をしているから、”モトを取るまで”やりたいと思う人が多い筈だが、本部は「面倒臭いオーナーを排除する」ことに頓着しない。

 「睨まれたくない」オーナーが担当者の顔色を見て、異論を口に出来ないとしたら、本部の思うがままであることは、公取委も十分承知しているだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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