クルマにエンジンが無ければ その2 

2020年11月23日 17:08

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この部分を如何にコンパクトにするかが課題となる ©sawahajime

この部分を如何にコンパクトにするかが課題となる ©sawahajime[写真拡大]

●車にエンジンが無ければ

 エンジンが無ければ、
 ・エンジンを搭載するスペースが不要
 ・騒音が無い
 ・振動が無い
 ・燃料を喰わない(燃料タンク不要)
 ・排気を出さない(エキゾースト系不要)
 ・ラジエター等の補器類が不要
 ・車両重量が軽くなる
 ・結果として車内は広々
 と、良いことずくめだろう。

【前回は】クルマにエンジンが無ければ その1

 単なる「移動手段としの車」なら、理想はエンジンの無い車だ。

●「エンジン無し」に近づける

 現実問題として、エンジンの無い車なんてあり得ないが、振動や騒音の低減や、燃料消費の改善等を、極力改善するのが一般的な取り組み目標となる。

 前稿では「騒音」と「振動」について触れたが、残る項目も検討して見よう。

●燃料消費

 全然燃料を喰わないに越したことは無いが、燃費が良いのは全てに有利に働く。

 1991年、マツダが日本車で初めて、第59回ルマン24時間耐久レースで優勝したのは、燃費が良かったことが大きな要因だった。

 燃費が良いので、燃料タンク容量が小さく出来た結果、車両重量も軽くなり、ブレーキの負担も軽減され、サスペンションに対する負荷も有利に働いた。レースだから、給油の為のピットイン回数、給油の所要時間も大いに関係した。

●燃料タンクの基準

 昔、燃料タンク容量の基準は、「満タンで東京~大阪間を、無補給で走破出来る」のがおよその目安であった。

 東名高速は、東京・世田谷~愛知・小牧が346.8km、名神高速が、愛知・小牧~兵庫・西宮が189.5kmあり、東名・名神合計は536.3kmある。高速道路を使わない場合もあるので、「約650kmの航続距離」を想定していた。

 実用燃費が、10km/L位の車の燃料タンクは65L程度、15km/L位なら、燃料タンクは45L程度だ。従って、燃料タンク容量から、その車の実用燃費は類推出来る。

●重量

 ガソリンの比重は0.75だから、65Lタンクの場合は(65x0.75)=48.75kg、45Lタンクの場合は(45x0.75)=33.75kgを積み込むことになる(勿論、走るに従って次第に軽くなる)。

 燃費が30km/L程度なら、燃料タンクは21.7Lもあれば良くて、(21.7x0.82)=17.8kg。65Lタンクだった車が 25L程のタンクまでに小さく出来れば、タンク本体も軽くなるから、30kg程軽量化が可能だ。

 勿論、テーマ通りの「エンジン無し」ならもっと重量軽減されるが。

 いずれにしても、車は軽い方が有利だ。

●補器類

 ラジエターもオルタネーターもセルモーターも、エンジンが無ければ全く不要だが、実際はそうも行かない。

 エンジンは極力コンパクトで高出力を達成したい。その為に、過給機(ターボチャージャー)等を装備すると、補器類は少し増える。

 最終的に、エンジン本体とターボチャージャー等の補器類の、総合重量との比較で、得られる出力に優位性がどうなるかだ。

●EV車も部分的には達成している

 EV車は、1充電走行距離の問題が解消されない限り、「自動車」としては未完成だと判断せざるを得ないが、市街地での近距離走行のみで使用するなら、EV車も部分的には達成しているといえるだろう。

 内燃機関では無い為、「爆発」を伴わないので、騒音の面では問題にはならない。また、それに付随する「排気系」部分が不要である。

 但し、「エンジン」に置き換わった「モーター」も結構な重量があり、「燃料タンク」が不要になってもそれ以上に重量がある「車載バッテリー」がある。その意味からも、EVの前途は決して洋々では無い。

 モーターに関しては、車輪に直結して駆動するタイプの「インホイールモーター」等の、新しい方向でのアプローチも考えられる。バッテリーの革新的な技術進歩に期待するべきだろう。

 結論として、「運転を楽しむ」自動車では無く、単なる移動手段であれば、

 ・コンパクトで不自由を感じない馬力がある
 ・燃料消費が少なく、タンク容量が小さく軽量化出来る
 ・駆動系はプロペラシャフト不要のFF(RRはトランク容量確保面で不利)

 といった要件を満たして、都会地の最小収納可能な駐車場に入る、全高1550mm以内に収めた、居住性を十分確保した車が理想だろう。

 但し、再度念押ししておくが、これはあくまでも「運転を楽しむ」自動車では無く、単なる移動手段であれば、の結論である。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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