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エリスロマイシンが炎症抑える仕組み解明 肺炎などの薬剤開発に期待 新潟大ら
エリスロマイシンはマクロライド系の抗生剤の1つだが、新潟大学の前川知樹准教授、前田健康教授、寺尾豊教授、多部田康一教授らの研究チームは、この抗生剤の抗炎症作用メカニズムを明らかにした。エリスロマイシンが血管内皮から分泌される抗炎症物質DEL-1を誘導し、肺炎や歯周炎を抑えることを突き止めた。今後は、炎症を抑える作用を持つ新たな薬剤の開発などが期待される。
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研究は、新潟大学、京都薬科大学、米国ペンシルベニア大学、ドイツドレスデン工科大学との国際共同研究として行われ、6日、JCI Insight 誌に掲載された。
エリスロマイシンは、細菌のタンパク質合成を阻害する抗生剤の1つである。その効果を発揮できる菌は数多くあり、また細胞への浸透性も高く、重い副作用も少ない使いやすい抗生剤だ。しかし一方で、耐性菌というこの薬剤の効かない菌が多く出現している。現在も、マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、クラミジア肺炎などでは第一選択の薬となっている。
研究グループは、実験的に肺炎を起こしたマウスに対して、エリスロマイシンを与えた。するとDEL-1が産生され、炎症の原因になる好中球が減少、さらに肺胞の形を維持できることがわかった。また、致死性の肺炎を起こしたモデルマウスを使用して検討したところ、エリスロマイシンを投与すると生存率が上がった。生存率を保つのに必要なエリスロマイシンの濃度は、抗生剤として使用する時の5分の1だった。
次に歯周病を起こしたマウスにエリスロマイシンを与えたところ、歯肉の炎症が抑えられ、歯を支える骨の吸収も抑えられていた。人の歯周炎が歯を支える骨を溶かし、歯を失う原因となっていることを考えると重要な作用だ。エリスロマイシンを与えた歯肉と骨を詳しく調べたところ、歯を歯槽骨に繋ぎ止める大切な働きをしている歯根膜にDEL-1の産生と好中球の減少を認め、その結果、炎症が抑えられていることがわかった。
さらにエリスロマイシンがDEL-1を誘導したため炎症が抑制されているのかどうかを検討するために、DEL-1を作ることができないDEL-1欠損マウスを用いた実験を行った。すると、エリスロマイシンを与えてもDEL-1欠損マウスの肺炎は歯周炎を抑えることができなかった。だがDEL-1欠損マウスにDEL-1を接種すると、炎症を抑えることができた。この実験によって、エリスロマイシンがDEL-1を誘導することで好中球関連の炎症を抑えていることが明らかになった。
これまでDEL-1を誘導する物質として、脂肪酸の1種レゾルビンや、ステロイドホルモンの1つであるDHEAが知られており、誘導の経路も明らかになっていた。エリスロマイシンはこれらと比較して、約3倍の強さでDEL-1を誘導するため、その経路を調べた。すると異なる受容体を介して誘導が起こっていることが明らかになった。
今回の研究結果により、エリスロマイシンの耐性菌増加を避けつつ、抗炎症作用を持つ新たな治療法、薬剤開発へとつながっていくことが期待される。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)
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