GTS Research Memo(4):バイオ新薬、バイオシミラー、新規バイオ事業の3つの領域で事業を展開(2)

2020年8月7日 15:14

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記事提供元:フィスコ


*15:14JST GTS Research Memo(4):バイオ新薬、バイオシミラー、新規バイオ事業の3つの領域で事業を展開(2)
■会社概要

(2) 歯髄幹細胞を用いた再生医療について
ジーンテクノサイエンス<4584>は新規バイオ事業(再生医療/細胞治療)を第3の柱とするため、2019年4月に、セルテクノロジーを株式交換により完全子会社化した。セルテクノロジーは歯髄幹細胞を利用した再生医療等製品の開発を行っており、国内で初めて歯髄細胞保管事業の運営を開始した企業として知られている。現在は国内約2,200の歯科医院とネットワークを結び、自家歯髄細胞保管サービスと他家歯髄細胞保管サービスを行っている。また、歯髄幹細胞を培養する際に生じる培養上清を美容クリニックや化粧品メーカー等にも販売しているが、同事業については2019年8月に会社分割により設立した(株)レムケアに移管している。

自家歯髄細胞保管サービスとは、乳歯脱落歯や親知らず等を、将来の子ども自身や家族の治療のために保管しておくサービスで、2009年のサービス開始以降、保管件数は数百件となっている。一方、他家歯髄細胞保管サービスは自分以外(他人)にも応用できる治療法開発のため、患者から無償で提供された脱落歯から歯髄幹細胞を培養し、研究用細胞として提携企業や大学などに提供するサービスとなる。

歯髄幹細胞とは、歯の内部に存在する歯髄と呼ばれる細胞を用いて製造・加工した幹細胞となる。その他の間葉系幹細胞と比較し、骨、軟骨及び神経細胞に分化しやすいほか、乳歯から採取するため細胞の再生力が極めて高いことが特徴となっている。過去の研究論文によると、骨髄由来の間葉系幹細胞と比較したマウスの実験で骨再生能力は3倍弱、神経成長因子や脳由来神経栄養因子の分泌量も数倍以上の開きがあり、こうした歯髄幹細胞の特徴から骨再生分野や神経系疾患等の領域での開発が最適と考えられている。また、細胞の再生力についても、同様の比較実験において細胞分裂スピードで約2倍、分裂限界回数で約3倍の開きがあるとの結果が報告されており、実用化された場合にはコスト競争力でも他の間葉系幹細胞を上回ることが期待される。さらには、細胞の採取は乳歯脱落歯から得るため、ドナーの負担が極めて少ないこと、また、多くのドナーからの提供が可能であるといったメリットもある。

こうした歯髄幹細胞を再生医療等製品として研究・開発していくためには、GCTP/GMP※に準拠した臨床用のMCBで製造された歯髄幹細胞が必要となる。このため同社はMCB構築のため、ニコン<7731>と業務提携し、ニコンでMCB構築に向けた製造方法の開発に取り組んできた。2020年3月に製造方法の開発を完了したことを発表しており、今後はMCBの製造と、MCBを増殖するワーキングセルバンクの確立並びに安定供給体制の構築に取り組み、早ければ2021年にも、臨床用の歯髄幹細胞を共同研究するアカデミアや製薬企業向けに出荷できることになり、医師主導の臨床研究が始まる可能性がある。

※GCTP(再生医療等製品の製造管理及び品質管理基準に関する省令に基づく適合基準)/GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令に基づく適合基準)


なお、同社はセルテクノロジーから歯髄幹細胞再生医療等製品の研究開発事業(資産・負債及び製薬企業との契約等)を譲受し、2020年9月末にすべての株式(レムケア含む)を業務提携先である(株)同仁グループに譲渡することを発表している。同仁グループではヒト幹細胞培養上清液を用いた医療用、化粧品原料の研究開発や化粧品の製造販売を行っており、ノンコア事業である歯髄細胞保管事業や培養上清事業を同仁グループに売却することで、再生医療等製品の研究開発にリソースを集中していく体制を構築する。株式譲渡については無償となるが、売却事業に関してのライセンス収入を獲得していくことになる。同仁グループの事業ノウハウとネットワークを活用することで、培養上清事業等が一段と成長すれば、同社の収益にも貢献する格好となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《ST》

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