"有事の金"はコロナショックでも健在か

2020年6月26日 10:58

印刷

●コロナ禍で金価格が上昇

 東京商品取引所(TOCOM)の金先物価格は、5月18日に1グラム=6,000円に乗せ、取引開始以来最高値を記録した。NY金先物価格も1オンス=1800ドルに迫る勢いとなっている。

【こちらも】ショック相場でPERは役に立つのか?

 NY金価格もコロナショックが起きた2月中旬から株価に連動して大幅に下落していたが、3月に入るとすぐに持ち直した。その後もたびたび下落しながらも上昇し、高値圏にとどまっている。

 有事の金という相場格言があるが、今回のコロナショックでもその格言に間違いはなかったのか?

●有事の金

 有事の金という言葉は、1970年代の米ソ冷戦時代に、最後に残るのは実物資産の金であろうという考えから金が買われたことに由来する。

 スイスでは当時、自宅のシェルターに金貨を保存していた。冷戦終結後、金価格は下落した。そして1991年の湾岸戦争時には金価格は下落したことから、有事の金の時代は終焉したと思われていた。

 しかし、2001年の9.11米国同時多発テロの時は、株や債券、原油、ドル全てが暴落する中で、金価格は上昇したことで有事の金復活と騒がれた。

 その後も、ウクライナ危機やリーマンショック、ギリシャ危機などの経済ショックの際にも金価格が上昇している。

●金融緩和策も追い風に

 金価格が上昇する背景には金融緩和がある。金融緩和は昨年から米国を中心に進められており、金価格も上昇傾向にあった。

 中央銀行が介入し、資金供給量を増やす金融緩和は、コロナショックのような経済が冷え込んだ時に刺激策としてたびたび行われる。

 市場に大量の資金が流れ込むことで、貨幣の価値が下がり、金利も下がる。持っていても利息がつかない現金より、価値がゼロにならない現物資産の金が好まれる。

 2008年のリーマンショック時にも金融緩和策が取られ、一時は今回同様に株と共に金価格も下落したが、その後上昇し続けて、2011年9月には安値の約3倍となる史上最高値1オンス=1923ドルを記録した。

 今回のコロナショックは、経済活動再開前から株価の回復が見られたが、第2波や再流行の懸念もあり、予断を許さない。リスクへの警戒感が強まれば、投資家は金を選び、さらなる上昇も十分にあり得るだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

関連記事