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VR酔いを低減する方法をバイクシミュレータで実証 静岡大とヤマハ発
実験の様子(上左)と実験の際に流された風景(上右)、実験の結果(下)。(画像: 静岡大学の発表資料より)[写真拡大]
近年はVRゲームやバイクシミュレータなどの普及によって、一人称視点で動きの大きな映像を体験する機会が増えている。そのような映像体験は酔いが発生しやすく、その低減技術の開発は社会的に大きな課題とされている。静岡大学とヤマハ発動機の共同研究グループは13日、エンジン音と振動の同期によって酔いを半分以下に低減することを発見したと発表した。この成果は、今後急速に普及すると考えられるVRシステムの発展に寄与すると期待される。
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海外の先行研究では、音や振動を映像に追加することによって酔いの軽減を試みるものがあったが、効果は得られていなかった。しかし、先行研究では周囲の景色などの映像と、音や振動が連動していなかった。今回、共同研究グループはこの映像と音や振動との連動こそが酔いに影響しているのではないかと仮説を立てた。
本研究の実験では、実験室内でスクーターに乗った参加者がヘッドマウントディスプレイを装着して行われた。参加者は1分ごとに、主観的な酔いの程度を20段階で回答。その結果、エンジン音と振動の両方があるスクーターに乗った参加者の酔いの程度が、有意に低いことが判明した。
しかし、エンジン音と振動の片方でも欠けた場合は、映像のみの場合と同様の酔いが参加者に発生。このことから、シミュレーション環境においても、普段と同様の音や振動などの刺激を再現することが、酔いの防止につながると示唆された。
この実験結果は、通常であれば強く連動している感覚情報の一部が欠落すると、映像酔いが発生する可能性を指摘するものである。つまり、ヒトの脳内においてどのように感覚が処理されているかを解明する、大きな手掛かりとなり得る。
さらに、本研究の成果によって、オートバイシミュレータやVRゲームなどの一人称視点での映像酔いの問題を解決する技術開発につながる。また、次世代のVRシステムを用いた遠隔操作や遠隔コミュニケーションの普及に貢献することが期待される。
今回の研究成果は12日付の「Scientific Reports」誌オンライン版にて掲載されている。
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