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ワクチン開発までに可能なパンデミック対策とは? 豪大学の研究
新型コロナウイルスのワクチンが開発されるまで、1~2年はかかると想定されている。治療薬が限られる状況下で、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックを防ぐためにどのような治療が可能だろうか。豪シドニー大学は4月30日、インフルエンザの流行を防ぐために有効な手法を、シミュレーションによって実証したと発表した。
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■プレパンデミックワクチンが有効
パンデミックは、標的となるワクチンが存在しない新種のウイルス株の登場により発生することが、典型的だ。政府はこのような状況下で、標的ワクチン以外の方法で感染爆発を緩和しなければならない。異なるウイルス株から作られた有効性の低いワクチン(プレパンデミックワクチン)や、抗ウイルス薬、ソーシャルディスタンス戦略等が候補として挙げられる。
シドニー大学の研究グループは、インフルエンザウイルスの標的となるワクチンが不在の状況下において、治療法の有効性を確かめるために、ウイルスによる感染爆発(アウトブレイク)に関するシミュレーションを実施した。その結果、社会的接触のある者に対する抗ウイルス薬の投与と組み合わせながら、プレパンデミックワクチンを用いることがパンデミック阻止にもっとも有効だと判明した。
インフルエンザの感染率を考慮しながら、治療は素早く実行に移す必要がある。研究グループによると、地域感染(エピデミック)を緩和させる治療法が有効である場合、より長い期間、対策を行う必要であると言う。エピデミックを緩和することで感染症の拡散を遅らせることは可能だが、ウイルスそのものを根絶することはない。
■社会的接触の追跡が重要
一方、感染者が現れた近隣の住民に抗ウイルス薬を投与することは効果的ではなく、感染症の拡散率に有意に作用しなかった。だが社会的接触のある者に対して抗ウイルス薬を投与することで、感染症の拡散を遅らせることが判明した。これは、社会的接触の追跡の重要性を補強する。
研究グループによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しても研究成果が適用できるという。ただしCOVID-19に対するプレパンデミックワクチンは現状存在しない。
研究の詳細は、国際科学誌Journal of the Royal Society Interfaceにて4月22日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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