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死語になった自動車用語「クランク棒」
免許証返納を考える年代になる様な、余程昔に免許を取った人でもない限り、「クランク棒」でエンジン始動した経験がある人なんて滅多に居ないはずだ。
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チャップリンの映画や禁酒法時代の、アンタッチャブルとかの、古い車が登場する場面で、車の前に回り込んでL字が繋がった様な形の鉄の棒を正面に差し込んでぐるぐる回して、エンジン始動している時に使うのが「クランク棒」だ。
自動車学校の「S字」コースと共に、L字が繋がった形の「クランク」コースの名前が示す通りの形状の、エンジン始動用の器具だ。
普通エンジンを始動するには、エンジンキーを回して「スターターモーター(セルモーター)」を回す。
昔の車は、冬場のエンジン始動が結構難しかった。普通にセルを回す始動方法でも、各々の車ごとにクセがあって始動のコツがあった。
先ず運転席に座ると、アクセルペダルを1~2回踏み込んで、チョークレバーを一杯引く。ギヤがニュートラルであるのを確認した上で、クラッチを切り(これは、たとえニュートラルでもミッション内の負荷を軽減するためだ)、セルモーターを回す。
プラグに火花が飛んで点火し、エンジンがぶるんと、かかる気配がしたら、アクセルを上手にあおって、継続的にエンジンが回る様に微妙に調整してやる。それと併せて徐々にチョークを戻して行く。
アイドリング回転が安定し、水温計の針が動き出して、ようやく走り出して良い状態となる。
ところが、バッテリーは気温が低いと能力が落ち、冬場のバッテリーは夏場よりも性能低下している上に、ガソリンも気化し難く、エンジン始動には一層不利になる。始動に失敗して、セルモーターを何度も回していると、バッテリーが降参してしまって、始動不能となる。
そこで、バッテリーが完全にアウトになる前に(点火プラグに火花を飛ばせる程度の余力がある間に)、クランク棒で始動する。
バンバーに鍵穴みたいなクランク棒を差し込む穴があり、そこからクランク棒を突っ込んで、エンジンのクランクシャフトを回してやる訳だ。1960年代までの車には、クランク棒を積んであるのが普通だった。
しかし、クランク始動には危険も伴った。
父親の車でクランク始動を習ったが、口を酸っぱく云われたのは、「クランク棒は下から引き揚げろ」であった。
普通にぐるぐる回す積りで上から下に押し下げると、俗に「ケッチン」と云った、逆回転に見舞われて、下手をすれば骨折するケースもあったからだ。
考えてみれば、なにもかも楽な時代になったものだ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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