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「終身雇用見直し」は「会社の既得権」も見直さなければならない
ここ最近、経済団体トップや経営者から、「終身雇用」や「年功賃金」はもう限界で継続できないとする発言が続いています。
特に中高年層の社員に対して、「貢献度よりも高い賃金を払い続けることはできない」「貢献度の低い社員を抱え続けることはできない」と言っています。
企業として、今の経営環境の厳しさからすれば、そういう流れは仕方がないでしょうし、貢献と賃金が一致しないような仕組みは、特に優秀な若者にとっては好ましいものではありません。また、グローバル化が進む中では、人事制度も世界標準に合わせていかなければ、海外人材を取り込むことも難しいでしょう。
ただ、この「終身雇用見直し」について、「今まで会社が社員を守ってきた」という文脈だけで語るのは、私は大きな違和感があります。「終身雇用」を維持してきたのは、決して社員だけを思って尽くしていたわけではなく、それが会社にとっても都合が良い側面がいろいろあったからです。
例えば、「終身雇用」と「年功賃金」は、働き手にとっては将来に渡って生活が保障される安心感がありますが、賃金支払いは「後払い型」とされています。若いうちは安い賃金で働く代わりに、子供の教育などで生活費負担が増える中高年に、賃金が上がっていくという仕組みで、会社は社員に先に借りを作っている形になります。
会社側から「終身雇用」を放棄するということは、「今までの借りはなかったこと」と踏み倒すようなもので、特に若い頃の借りをこれから返してもらうはずの40代、50代という人たちにとって、急なゲームチェンジは理不尽そのものです。何かしらの配慮は必要でしょう。
また、社内の人事異動について、今の日本の判例では、会社側が大きな裁量を持っています。多くの社員が社内ゼネラリストとして扱われ、配属、勤務地、仕事内容など会社に指示に従わざるを得ませんが、それは「将来まで生活の面倒は見るから、そのかわり多少のことは我慢してね」という前提の話があります。
専門性が失われるような職種変更や、生活基盤を揺るがすような勤務地変更は、「終身雇用」で将来まで生活の保障があるから受け入れられるのであり、ここにも長期にわたる貸し借りの関係があります。
もし「終身雇用見直し」を言うのであれば、これら会社側の裁量も見直さなければならないはずです。
さらに、副業禁止は「全部面倒を見るから会社の仕事に集中しろ」ということですが、それができないならば、禁止を言う資格はありません。「過重労働を助長する」などという会社側からの指摘は、確かにそういう問題はあるにしろ、私は言えない立場からの負け犬の遠吠えのように聞こえてしまいます。
長期雇用によって、社員はあまり学ばなくても仕事に支障はありませんでしたが、会社側も教育投資を抑えることができていたはずです。
これからはお互いにそうはいきませんが、社外で学ぼうとする社員に良い顔をしない会社は、今でも思った以上に多いです。ある社会人大学で聞いたことですが、学生の7割近くは「知らせるといろいろ面倒」という理由で、会社に内緒で受講しているそうです。
「終身雇用見直し」は、これから間違いなく進むでしょうが、それが前提で成り立っている「会社の既得権」も、同じように見直さなければなりません。どんなことでもそうですが、お互い様であることに気づき、ウィンウィンを考えなければ成り立たないことがたくさんあります。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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