AIが119番通報の緊急度判定を支援 京都橘大と日立が共同研究

2019年12月25日 07:30

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緊急度判定支援システムの共同研究の概念図(画像:日立製作所の発表資料より)

緊急度判定支援システムの共同研究の概念図(画像:日立製作所の発表資料より)[写真拡大]

 京都橘大学(京都市山科区)と日立製作所(東京都品川区)は24日、119番通報の内容などから、人工知能(AI)が傷病者の緊急度を予測する通信司令員向け支援システムの共同研究を始めると発表した。

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 システムは通報時に聞き取った年齢や性別、症状、既往症などの情報をもとに、AIが傷病の程度や病名、緊急性を予測。通信指令員がドクターカーや救急車出動の必要性と優先度などを判断する際のサポートを行う。

 近年、高齢者の増加によって救急出動件数も増加しており、救急出動が重なることで現場到着時間が遅れるなどの事態も起きている。このため、消防署の通信指令員は通報の内容から緊急度を判断し、適切に対応する能力が求められている。

 京都橘大健康科学部救急救命学科では、通信指令教育や救急救命態勢などの研究に取り組み、緊急度判定の精度を向上させる研究を進めている。

 また日立は、最先端のICTを取り入れた高機能消防指令システムを開発し、システムは京都市消防局にも導入されている。こうしたことから、両者でAIによる判定モデルの構築に取り組むことになった。

 研究では、大阪府豊中市の消防局から提供される通報時の聴取内容や搬送時の救急隊の記録、搬送先での診断結果といったデータを使い、AIシステムによる判定を検証。判定結果と実際の記録や診断結果を突き合わせることで、AIに学習させ、システムの精度向上を図る。

 システムに使われるのは、日立が独自開発した根拠を説明できるAIで、緊急度を予測した根拠を示すことで、通信指令員が的確に判断できるよう支援する。また、予測根拠を分析することで、初動段階で聴取すべき項目の把握につながることが期待できる。

 今後、京都橘大では、豊中市のような都市部のデータだけでなく、地方でのデータ収集も行い、緊急度判定システムの向上を目指す。

 また日立では、「研究成果をもとにサービスの事業化を検討し、新たな消防指令システムの導入を図っていく」としている。

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