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ソフトバンクGと孫正義会長の天国と地獄 (4)「見た目は山賊のような」再建請負人
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経営危機に直面したウィーワークの再建を託されたのは、ソフトバンクグループ(SBG)副会長で米携帯大手スプリントを立て直したマルセロ・クラウレ氏だ。
【前回は】ソフトバンクGと孫正義会長の天国と地獄 (3) ユニコーンの舞台裏と禁断の道
スプリントは13年7月にSBGが2兆円で買収していたが、通信網が脆弱で顧客離れが続く上に4兆円超の負債に喘ぐ状況が改善できず、多額の投資が必要になる次世代通信規格「5G」へのインフラ整備の実行力にも疑問符が付けられていた。
スプリントのCEOに就任したマルセロ・クラウレ氏は、首位のベライゾン・コミュニケーションズと、2位のAT&Tからの乗り換え客に料金半額キャンペーンを実施すると共に、人件費や経費など年間2000億円規模の削減プロジェクトも推進した。
それらの努力が実を結んだのか、18年3月期には通期で11年振りに最終黒字を達成するところまでたどり着いた。おまけに数年来の懸案だった3位のTモバイルUSとの合併にも現実味が強まるという絶好のタイミングにも恵まれた。
SBGの孫会長兼社長から「見た目は山賊のようだ」と親しみを込めて評されるマルセロ・クラウレ氏が向かったウィーワークは、賃貸ビルを小洒落たワーキングスペースに改装して転貸(又貸し)することが主要なビジネススタイルだ。世界中で700棟とも言われる賃貸ビルを管理し、売上規模は驚異的な上昇を示していた。
足りないところは肝心の利益が伴わないことだ。
いくら言葉を飾っても、起業家が家賃として支払う金額を抑えたいと考えることは当然だから、簡単に賃料を引き上げることは出来ない。投資額を抑えるとありきたりのシェアオフィスになってしまい、起業家を引き付ける魅力が薄れてしまう。
更に先行投資で押さえた賃貸ビルの支払い賃料は契約期間を通して容赦なくのし掛かってくるし、設備投資を施して商品に仕上げるまでの期間に賃料収入を生み出すことはない。
現在でも利便性の高い物件は良好な稼働率を上げているようだが、無理して押さえた利便性が低い多数の物件は商品に仕上げるための工夫が必要だろう。いずれにしても既に賃借契約を結んでいるビルに関しては契約期間中の賃料支払いは避けられない。
反面、起業家等との賃貸は契約のハードルを下げるため、今までは最短1カ月でも可能にしていた。簡記すると、支払いは長期固定化し収入は入れ替わりが激しく常時変動するということになる。
マルセロ・クラウレ氏がどんな解に導くのか注目されるところだが、現在伝えられているのは従業員を2割削減して21年には黒字化させるという。
一般的に経営再建計画は多少背伸びをした状態で発表される。興味津々で見つめる関係者に、不安がないことをアピールする手法の一つだが、それでも単年度黒字にたどり着くまでに2年という期間を要するという。
SBGとソフトバンク・ヴィジョンファンド(SVF)にとっては、最低でも2年間はウィーワークへの投資資金を塩漬けにするしかない。その間も、SVFはサウジ系の投資資金に6%の確定利回りを支払わなければならない。IPOが可能になる時期がもっと先になると考えると、他の投資先が平穏に推移しても、SBGにとって相当の負担になることは不可避と言える。推移が注目される所以だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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