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「早く定年したい人」と「働き続けたい人」
つい先日、日本で65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は、28.4%と過去最高を更新したという報道がありました。世界的にみても2位イタリアの23.0%、3位ポルトガルの22.4%を引き離して、突出して高齢化が進んでいるとのことで、この比率は今後も上昇していく推計です。
最近の話題では、定年後の生活費で年金以外に2000万円必要になる試算があったり、年金の支給開始年齢繰り上げの検討であったり、定年延長やシニア人材活用の議論であったり、社会全体の高齢化に伴うものが多々ありますが、それらは労働力不足への対処の一環や、本人の老後の生活費の補填などの理由から、「定年後も働き続けなければならない」という論調が大勢です。
そうは言っても、「定年ですっぱり退職したい」「一刻も早く仕事から離れたい」という人はいます。私の知り合いでも、会社から強く雇用延長を要請されても、かたくなといってもよいほどに固辞した人が何人もいます。定年で仕事が辞められることを待ち望んでいたようです。
「もう十分働いたからのんびりしたい」「やりたい趣味がある」など、明確な理由のある人が多いですが、中には単純に勤労意欲がないだけに見える人もいます。
一方で、やはり元気なうちは仕事をしていたいという人もたくさんいます。私の周りには、経営者や自営業者など、定年自体がなくて引退時期を自分で決められる人もたくさんいるので、「働き続けたい人」が余計に多く見えますが、会社員だった人でも「定年後に仕事があってよかった」「通う場所があってよかった」「急に仕事がなくなったら何をしてよいかわからなかった」などといいます。やはり定年によって、急に社会とのつながりを切れてしまう不安が、結構大きな問題になるのでしょう。
また、仕事が続けたくても、自身の健康や家族の問題、仕事内容や条件の問題などで、それが難しい人もいますし、逆に仕事を辞めたくても、生活費などの金銭的な問題、後任者や後継者不在の問題などで辞められない人もいます。
何が言いたいかというと、「定年制」には一つのけじめという意義はあるものの、年齢という基準だけで全員一律に引退時期を決めるのは、やっぱり無理があるということです。「働きたくない人」を無理やり働かせることはできませんが、「働き続けたい人」でも一律にその機会を奪うのは、社会として損失です。
今は「再雇用制度」がありますが、多くの会社の制度は、シニアを定年後も戦力として活かすというよりは、できれば早く追い出したいが、法律で決まっているから仕方なく雇い続けているように見えることも多いです。年功賃金で仕事内容に対して高コスト化しているような事情もあるでしょう。
企業人事としての課題の中で、実は「定年制」は、「年功賃金見直し」とセットで考えなければならない優先度が高い大きなテーマです。若手の意欲を妨げず、会社の戦力としてシニアを活かすには、年齢一律の定年制で退職させたり、雇用を継続しても報酬を下げたりすることでは難しく、もっと個々の能力や希望に合わせた対応をしなければなりません。
当然ですが、賃金も過去の管理職歴に左右されたり、年齢一律であったりすることではなく、あくまで仕事内容を基準に決める必要があります。
「早く定年したい人」も「働き続けたい人」も、もっと自分なりの人生設計を考えられるようにすることが、大事ではないでしょうか。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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