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事業継続こそ中小企業の役割。戦わずして勝つ経営とは【財務はおもしろい~老舗企業の思考から学ぶ、 " 百年続く中小企業経営 " の教科書~】
【第3回】多くの企業・経営者の経営コンサルティングから生み出された「数字を使わず経営を理解するカベヤ式財務のノウハウ」。数字が苦手な人にこそ知ってもらいたい、決算書の数字が読めなくても企業の置かれた状態が簡単に理解できる考え方と老舗企業が100年続く経営の仕組み、財務の考え方から中小企業が永続的に続くための秘訣をお伝えします。
本連載は、書籍『財務はおもしろい 老舗企業の思考から学ぶ、"百年続く中小企業経営"の教科書 (数字を使わずカンタンに理解するカベヤ式』(2019年7月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。
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財務の基礎となる「財務諸表」「 貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」について、こちらの連載でお伝えしています。 多くの企業・経営者の経営コンサルティングから生み出された「数字を使わず経営を理解するカベヤ式財務のノウハウ」。数字を極力使わずに、さっと短時間で財務の全体像と重要ポイントを紹介します。
「納税」よりも大切な中小企業の役割とは何か?
利益というものを理解するために、最初に考えなければいけないテーマがあります。それは「中小企業の役割」です。
これは財務において、経営において絶対に見誤ってはいけない非常に重要なテーマです。
中小企業には、具体的にどんな役割があるのでしょうか?
中小企業には様々な役割がありますが、「それは、納税です」と答える方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かに納税も中小企業の大切な役割ですが、実はそれ以上にもっと重要で本質的な役割があります。それは「雇用」です。
中小企業が担っている最大の役割は、雇用をすること、雇用をし続けることである。この定義付けを根本に置いておかなければ、本来進むべき道から足を踏み外してしまう可能性が高いのです。
国全体の納税金額を見ると、中小企業よりも大企業のほうが相当大きな額を納税しています。一方で、雇用は、日本の労働者全体の約70%を中小企業が担っています。つまり、日本では大部分の人が中小企業で雇用されているのです。
大企業は国内に1万数千社しかありません。現在日本には約400万社の企業がありますが、そのほとんどが中小企業であり、そこで大部分の人が雇用されていて、そこで皆さんの生活が営まれているのだという根本概念が分かると、中小企業の重要な役割は「雇用をすること」「雇用をし続けること」なのだ、ということが分かってくるはずです。
全ては「雇用」と「事業の永続」のためにある!
では、雇用をする、雇用をし続けていくためにはどうしたらいいのか? というと、答えは「事業を続けていく」ことになります。
事業をやめてしまうことは雇用を維持できなくなることです。したがって、最終的に中小企業の最大の役割は、雇用するための「事業の永続」ということになるのです。
ここで「利益」というものが何か? が見えてきます。そう、事業を永続させていくための一つの条件として「利益」というものが必要なのです。
もちろん事業を永続させるためには、企業理念や人材、信用・信頼、他にも様々なものが必要でしょう。しかし、絶対なくてはならないもの、それが「利益」です。
企業は利益を上げていかなければ事業を続けていくことができません。最初にここを見誤ってしまうと、利益を上げるということの意味が大きく変わってしまうのです。
中小企業の役割は「事業を永続させ雇用し続けること」である。ここにフォーカスを当てておくと、実は経営を行うのが相当やりやすくなります。
では次に、その経営と財務・会計との位置付けとはどのようなものか? についてまずは概念的にお話ししておきましょう。
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「会社にとって財務とは何か」「会社を永く続けるとは何か」など、健康な会社経営のノウハウや老舗企業が100年続く経営の仕組み、財務の考え方から企業が永続的に続くための秘訣を学ぶことができます。
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「経営」と「戦略」と「会計」の関係
戦略とは「戦わずして勝つ」ことである
言うまでもありませんが、「財務・会計」と「経営」、この2つは非常に密接に連動しています。なので財務・会計の話をする前に、まず経営とは何か? 経営戦略とは何か? についてお話ししておきます。
まず、「経営の役割は何か?」ですが、それを一言でいうと、「戦略を立てて実行すること」ということになります。経営=戦略なのです。「経営者の役割は何ですか?」と聞かれたら「それは戦略を作り込むことです」と答えるのが正解です。
では、「戦略」とは何でしょうか? いろいろな定義があると思いますが、カベヤ式では、「戦略とは、戦いを省略することである」と定義しています。
これは孫子の兵法の言葉にもあります。「戦わずして勝つことこそ最上の戦略である」、要は「戦わずして勝つためには、どのような戦い方をするべきか」を考えるのが戦略の肝なのです。
戦略というものは、戦わずしていかに勝つか。そこで例えばポジショニングやブランディング、プライシングといったいろいろなものが連動してくるのです。いかに競争せずに勝つのか、というのが事業戦略の大元にある概念です。
つまり、わざわざ競争しなければいけない市場で戦おうとしない、ということです。この、戦わずして勝つという考え方を組み上げて頭で勝負するのが経営者なのです。
中小企業の経営者は、「経営者であり、かつプレイヤーでもある」というパターンが多いと思います。プレイヤーとして忙し過ぎて、経営のことを意識する時間がなかなか取れない、という方も多いと思います。しかし、会社としてどういう戦略を組み上げていくのか、というところを明確に決めること。これが経営者に課せられた重要な役割です。(次回へ続く)
書籍著者:壁谷 英薫さん
愛知県出身。一橋大学商学部在学中三年次に公認会計士試験合格。KPMGあずさ監査法人に入社、監査及びコンサルティング業務に従事。 製造業やサービス業の証券取引法(金融商品取引法)監査、会社法監査、米国上場企業の監査に携わる。大手銀行の国際会計基準の合併監査を手掛ける。入社四年目以降は大手商社などのコンサルティング業務に携わる。 2011年 壁谷公認会計士事務所設立。「子供達の目標となる、輝く大人が溢れる世界の実現」をミッションとして掲げ、会社のミッションとビジョンを作成し、ビジョン実現のための戦略作り、体制づくりの経営コンサルティングを会計面、経営面、税務面から提供している。 元のページを表示 ≫
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