パワハラ規制法成立で職場はどう変わるのか

2019年7月2日 17:53

印刷

 職場のハラスメント対策の強化を柱としたパワハラ規制法(労働施策総合推進法の改正案)が、5月に国会で成立した。パワハラの要件を規定したうえで事業主に相談体制の整備などを求める法体制が実現したが、これを機に職場はどう変わっていくのだろうか。

【こちらも】「パワハラ」と言われることの本質は、今も昔も変わらないと思うこと

■パワハラの要件を法律で規定

 今回成立した改正案ではパワハラについて、「職場において行われる、優越的な関係を背景」とし、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により」、「労働者の就業環境が害される」(第30条の2)ことという、3つの要素を満たすものとして定義している。

■ようやく動き出したパワハラ規制

 労働局へのパワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」の相談は、2017年度で約7万2000件、相談内容別では6年連続最多になっており、深刻の度を深めるパワハラ問題に対しようやく法制化に踏み切った格好。多くの被害が出ている中で遅きに失した格好だか、企業側の努力義務が課せられたのは前進と言える。

 一方で、今回の法整備では罰則を伴う禁止規定はないため、各企業の取り組みに温度差が生じることが考えられ、パワハラ対策に「企業間格差」が生まれる可能性もはらんでいる。当面は「成功事例」を生み出した企業をモデルにしながら、他の企業が追随するという、手探りの状態が続きそうだ。

■働きがいを実感できる職場を作る努力を

 国を挙げてのパワハラ対策がようやくスタートラインに立った今、ハラスメントにあたる言動を企業、労働者双方が共有し、いかにパワハラのない企業風土を浸透させていくことが課題になる。

 そのうえで、どこまでが指導でどこからがハラスメントか、その線引きを現場レベルで模索する動きが本格化することになるだろう。現場の小さな声をくみ取りながら深刻化する前にパワハラを排除する姿勢が、これからの時代、健全な職場環境の形成に取り組んでいるかの試金石にもなりうる。

 人格を傷つけ心身の不調に追い込み、職務に悪影響が出るほどの被害を及ぼす事態をいかに防いでいくか。その努力は、そこで働くすべての人々が「働きがい」を実感できる職場をつくることにつながっていく。(記事:岡本崇・記事一覧を見る

関連記事