関連記事
その仕事は本当に「社員」でなければダメなのか
フリーランスで働く人と、発注者を仲介するプラットフォーム運営会社の「ランサーズ」が、最近出した新聞広告が話題になりました。
「#採用やめよう」というキャッチフレーズが掲げられ、上下逆さまになった全面広告です。
ネットの普及などで、場所や時間にとらわれずに働くことができるのに、昔ながらの労働観が根強いために、柔軟な働き方や多様な人材を活かしきれていないと指摘していて、人手不足なのに「採用やめよう」という逆転の発想を表現するために、上下逆さまで掲載したそうです。
ランサーズの社長は、「正社員だけを前提にして働くことや採用を考えるのをやめよう、という議論するきっかけになれば」と言っています。
この広告に対しては、「優秀な人=正社員でなくなってきている」「働き方の多様性がもっと広がるといい」といった反響があるそうです。
私自身も企業に雇われずに働いている立場なので、その点からの共感はありますが、一方では企業の人事を支援する立場なので、採用する側に立つこともあります。
ここ最近は、多くの企業が「人手不足」に悩み、なかなかうまくいかない採用活動に悩んでいて、私には、採用媒体の選び方、募集広告の書き方や広報のしかた、面接ほかの活動の進め方など、様々なアドバイスを求められます。場合によっては、企業の採用担当の人たちと一緒に、様々な現場の仕事にかかわることもあります。
そんな中で、どの会社に対しても言う機会が増えたのは、「その仕事は本当に社員でなければダメなのか?」という話です。
そもそも私が採用活動を支援しているということは、私のような外部人材を、自社の採用活動に携わらせるような会社なので、何でも社員、内製にこだわる考えはない会社です。自社の戦力になるのであれば、形にこだわらず活かそうとするので、わりと進歩的な考え方をする会社といえます。そんな会社でも、たぶんどこかに昔ながらの価値観での思い込みがあるのです。
「なぜ社員でなければダメなのか?」と聞くと、多い答えは「今までそうだったから」「現場から社員がいい、社員でないと困るといわれるから」といったものですが、「ではその仕事がパートタイマーや協力会社に置き換わったり、アウトソースされたりしたら、どんな問題が起こるのか」と聞いても、明確な答えのないことがほとんどです。そこまで考えていないといった方が正しいでしょう。
理由として、「コア業務だから」といわれたことがあり、確かにそういう部分はあり得るでしょうが、コア業務だからこそ、いつ退職するかわからない社員より、契約で縛られる社外に任せた方が良いという考え方もあります。結局はその会社の価値観によることで、すべてに通用する理由ではありません。
「セキュリティの問題」を挙げた会社がありましたが、社員の方が機密保持レベルが高いとは言い切れません。管理する仕組みによる部分の方が大きいでしょう。
「責任感」「忠誠心」「命令順守」という話もありましたが、それが社員の方が上だと思うのは、やはり一種の思い込みでしょう。
もうずいぶん前になりますが、ある会社から「とにかくフルアサインでずっと社内にいて欲しい」と依頼されたことがあり、先方にその理由を聞くと「何かあった時のために、いつもいてくれないと困るから」とのことでした。
それほどの業務量があると思えないことと、その時は他にもいくつか仕事を抱えていたので、お断りせざるを得ませんでしたが、この例も「社員でなければ」という発想に近かったのだと思います。
私の周りには、自分と同じ境遇ということもあって、個人や小規模法人で仕事をしている人が大勢いて、そこには経験豊富で優秀な専門人材が数多くいます。
これからも引き続き人手不足が考えられる中では、雇う側も働く側も、もっと柔軟にいろいろな選択肢を考える時代になっていると思います。
「社員でなければ」などと、旧来の価値観で決めつけるのをやめれば、会社と働き手の両方にとって、より望ましい形が見えてくるのではないでしょうか。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
スポンサードリンク
関連キーワード