山形の百貨店・大沼、経営権が投資ファンドから幹部職員らの投資組合に

2019年3月25日 18:42

印刷

 山形県の老舗百貨店「大沼」の経営権が、投資ファンドのマイルストーンターンアラウンドマネジメント(MTM)から大沼の幹部社員が出資する大沼投資組合に移ったことが分かった。民間信用調査機関の東京商工リサーチが25日、明らかにした。

【こちらも】甲府の山交百貨店、9月末閉店で半世紀の歴史に幕

 東京商工リサーチによると、大沼投資組合はMTMに出資していた金融会社からMTMが返済を遅延した融資債権の譲渡を受けた。この債権の担保が大沼の全株式だったことから、経営権がMTMから大沼投資組合に移る形になった。

 大沼は臨時株主総会と取締役会を開き、大沼の社長を兼務していた早瀬恵三MTM社長らMTM側の取締役4人と監査役1人を解任。永瀬孝執行役員経営企画室長を社長、大沼幹部職員を取締役、監査役に充てる役員人事を決めた。

 大沼は経営再建のために2018年、創業家からMTMへ経営が引き継がれたが、MTMが当初の出資金3億円のうち、約3分の2をファンド本体に還流させるなどしたため、店舗改装資金が確保できずに経営再建計画が難航していた。

 MTMが再生を手掛ける岩手県盛岡市の商業施設「ななっく」の閉店が決まり、MTMの財務状況悪化が明らかになっていた。大沼の幹部職員の間では、MTMに対する不信感が募っていたという。新体制となった大沼は今後、費用対効果の視点から再生計画を見直し、取り組みを進めることにしている。

 大沼はルーツとなる荒物屋が江戸時代の1700年に創業された山形県の老舗企業で、太平洋戦争後の1950年から百貨店の経営を始めた。一時は山形市の本店をはじめ、米沢市、酒田市で百貨店合計4店舗を経営していたが、大型ショッピングセンターとの競合やインターネット通販の攻勢などから売り上げが低迷、4期連続の赤字決算となったのを受けてMTMへ経営権を譲り渡して再建に入っていた。

 現在は山形市の七日町に山形本店、米沢市の平和通りに米沢店を運営している。ともに中心市街地の核店舗と位置づけられるだけに、中心商店街活性化の視点からも大沼の動向に注目が集まっている。(記事:高田泰・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事