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新石器時代以降の食物の変化が音声言語を変化させたという研究結果
人類の歯の咬み合わせが新石器時代以降変化したことにより、現在の音声言語の形成に影響を与えたという研究成果が発表された(論文アブストラクト、Phys.orgの記事、Inside Scienceの記事、Ars Technicaの記事)。
自然言語の音声には「a」や「m」といった幅広い言語で共通してみられるものもあれば、南部アフリカ言語の一部でみられる吸着音のように出現頻度の低いものもある。このような違いは生物学的な制約による発音のしやすさや聞き取りやすさ、習得しやすさが影響し、人種レベルで異なるとみられている。
言語学者のチャールズ・ホケットは1985年、人類が柔らかいものを食べるようになって上の歯が下の歯に覆いかぶさるような咬み合わせに変化したことで、上の歯と下唇を付けて発音する「f」や「v」のような唇歯音が出現したという説を提唱した。今回の研究では古人類学と音声科学、歴史的言語学に進化生物学の手法を組み合わせ、この説を支持する証拠を提示している。
人は上の歯が下の歯に覆いかぶさる咬み合わせで生まれるが、旧石器時代には大人になるまでに肉を噛み切るのに適した上の歯と下の歯の歯先が合う咬み合わせへ変化していった。しかし、農耕や食品加工が発達して柔らかい食べ物が増える新石器時代以降、大人になっても上の歯が下の歯に覆いかぶさる咬み合わせが維持されるようになる。生体力学モデルによると、このような咬み合わせでは歯先の合う咬み合わせと比べ、唇歯音を発音する際の筋肉運動量がおよそ30%少なくなるという。
上唇と下唇を合わせる両唇音で咬み合わせによる筋肉運動量の変化はみられないが、発音時の歯と唇の距離が短くなっており、偶然に唇歯音として発音する可能性は高くなる。インド・ヨーロッパ語族の場合、6,000~8,000年前の言語ではおよそ3%が唇歯音を含むと推定されるのに対し、現存言語では76%が唇歯音を含むとのこと。今回の研究結果は、社会の変化が人類の発音機構に影響を与え、音声言語の変化を生んだことを示すものになるとのことだ。
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