スルガ銀行・TATERU・レオパレス21に共通する”時価総額の大幅な喪失”

2019年3月15日 18:45

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 メルヘンチックな「かぼちゃの馬車」という名称とは裏腹に、土地や建物の価格に嵩上げ疑惑が巻き起こり、入居者が交流するスペースが存在しないシェアハウスを展開していたスマートデイズが発端だった。サブリース契約で約束していた賃料の支払いが履行不能に陥った18年1月、スルガ銀行の株価は終値のピークで2569円を付けていた。

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 当初はスマートデイズのお粗末な営業・管理体制や、自転車操業的な経営振りが伝えられたが、徐々に融資の審査関連書類の改ざん問題がクローズアップされて、疑惑の本丸がスルガ銀行にあることが認識されて行った。

 18年9月に公表された第三者委員会報告書がとどめになった。とても銀行とは呼べないような、目標達成への怒声と恫喝が飛び交う営業店の実態が赤裸々に綴られ、審査関連書類の改ざんに至っては銀行職員が率先して誘導・教唆していたことが明白になった。

 こうした状況を背景に、スルガ銀行の株価は、18年の12月には374円まで下降を続けて、同年1月との比較では▲86%という惨たんたる状況となった。

 スルガ銀行問題が拡大の一途を辿っていた18年8月には、「TATERU」で行われていた投資用アパートの融資に関わる不正行為が明るみに出た。融資申込書に添付されていた借入申込人の預金残高を実際よりも多くする改ざん行為で、スルガ銀行でも行われていた手口だ。

 12月に公表された特別調査委員会の調査結果報告書によると、営業部長ほか30名の職員が不正に関与し、成約した2269件のうち350件で改ざんがあったという。特別調査委員会はその原因を、「上司に対して自由な発言が出来ない組織風土の中で、ノルマへの過度のプレッシャーに晒された職員が、法令順守よりも目先の成果獲得にのめり込んだ」ためだと、まとめている。TATERUという企業名がスルガ銀行だったとしても、違和感を覚えさせないタイミングと内容だった。

 18年4月に2549円を付けていたTATERUの株価は、最近は260円前後を上下する悲惨な状況で、実に10分の1にまで下落してしまった。逓減傾向が継続するばかりで、現状では回復の兆しを見出すことは出来ず、受けた傷の深さを感じさせる。

 レオパレス21では18年5月に建築基準法違反が発覚したため、1年間の時間をかけて全国の施工物件3万7853棟の調査を行うことが発表されていた。2月19日に、石井啓一国土交通大臣が優先調査対象とした約1万5000棟のうち、1895棟に建築基準法違反が確認されたことを発表。違反内容は火災時の延焼を防止するために不可欠な工事が、適切に行われていないというもので、特に危険度が高いと見られる入居者7800人に対して3月末までに転居することを求めるに至った。

 レオパレス21は18年5月に1023円だった株価が、最近は250円内外を上下する状況だ。前記2社と比較すると”まだまし”というところに踏みとどまっているが、5分の1に下がっていることを考えると窮状に相違はない。

 この3社に共通するのは、主たる事業が賃貸住宅と関わっていることと、わずか1年程度の期間で発行済み株式の時価総額を、75%~90%もの大幅なダンピングに追い込み、再浮上どころか終息の気配すら感じさせないところである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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