音楽は学校教育における効率を上げる可能性 カナダの研究

2019年3月1日 09:50

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●心地よい音楽が脳に与える刺激が判明

 カナダのモントリオールにあるマギル大学は、『米国科学アカデミー紀要(Pnas)』に、音楽と学習についての新たな研究結果を発表した。科目の間に心地よい音楽を聴くことは、脳の特定の領域に恩恵を施し、結果として学習の効率がよくなるのだという。

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●「音楽」が持つ潜在的な力と健康への寄与

 音楽を聴き、踊り、歌う。「音楽」は、われわれの生活の中で感情の増幅と密接に関連している。

 近年、科学の分野ではこの音楽が脳に与える影響や音を聞くことで健康にどのような寄与をするのかという関心が高まってきた。たとえば過去のある研究では、音楽を聴くことでストレスによる不安感や焦燥感などの症状が緩和することが報告されている。

 また、音楽療法がアルツハイマー病などの脳の疾患に有効な治療法であることも明らかになってきた。

●脳の報酬系を刺激する音楽

 今回のマギル大学の研究では、音楽が脳の報酬系を活性化させ、その結果学習能力が刺激されることが判明した。

 研究には、18歳から27歳の20人がボランティアとして参加。研究チームは彼らに、「心地よい音」と「耳障りな音」を聴かせながら、研究チームが用意した色や方角を選択させる。何回かの試みの後、ボランティアたちは脳に刺激を与える「心地よい音」を聴き分けて、色と方角を選択することが可能になった。つまり脳の報酬系は、心地よい音楽を聴くためにどのような「色」と「方角」の組み合わせを選択すべきかを速やかに学習したことを表している。

 研究中の参加者の脳は、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって分析された。

 その結果、脳は予測していなかった事象が起こるとより活性化することが明らかになった。この報酬予測誤差は、学習のための重要なプロセスであるという。つまり、予測していた「報酬」と実際に受ける「報酬」との間にギャップがあるほど、脳内の側坐核と呼ばれる領域が活動をはじめる。脳が予想外の「喜び」を受け取ると、それを再び得ようとする行動が強化されるのである。

 側坐核は、過去の研究では「食べ物」や「お金」に対して活性化することが判明していたが、「音楽」に対しても反応することが明らかになった。

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