「食事を共にすると親密になる」という話

2019年1月10日 18:16

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 最近は会社の飲み会や上司からの飲みの誘いを嫌う若手社員が増えているといいます。
 ある調査によれば、「職場の飲み会に行きたいかどうか」を尋ねると、20~30代では行きたい人が47%、行きたくない人が53%と、若干ですが行きたくないと思う人が上回っています。
 ただ、同じことを上司の世代に聞いても、行きたい人が52.3%、行きたくない人が47.7%と、行きたい人の割合がわずかに上回るものの、同じく2人に1人は前向きでないそうです。
 どうも世代を問わずに、会社の飲み会はやりづらくなっているようです。

 また、20代を対象にした別の調査ですが、「職場の飲み会のどんなところが苦手か?」という問いには、「お金がかかる」という答えが男女とも5割強あり、さらに男性ではそれと同等、女性では6割を超えて「気を使う」という回答が多かったそうです。やはり上司や先輩、その他交流がない人もいる席ではリラックスすることができず、プレッシャーを感じることが大きいようです。
 たぶんこれは上の世代でも同じで、誘い方や話す内容、行く店をどうするか、お金をどうするかなど、とにかくいろいろ「気を使う」という話を聞きます。

 一方で「会社の飲み会の必要性」を聞くと、全体で58.9%が「必要だと思う」と回答し、男性では全世代で64~67%が必要だと答えています。
 行きたくないけど必要ということでは、仕事の一環と割り切っているのかもしれませんが、そうであればなおさら「できれば行かずに済ませたい」となってしまうのでしょう。

 私個人のことで言えば、お酒はそれなりに飲めるし、食べるのは好きだし、人見知りもせず、会社や仕事関係の人との飲み会を嫌だと思ったことがないので、若い頃からその手のお誘いにはよくお付き合いさせて頂きました。
 そのおかげで人脈形成できたことがたくさんあるので、飲みニケーションについては肯定的に思っていますが、これをそのまま他の人に勧めるかというと、それが苦手な人は大勢いますし、強要するものではないと思います。

 ただ、お酒を飲まなくても、親交を深めるために食事の場をともにするのは、人種や文化を問わず万国共通です。
 これは人間が原始時代から集団生活をしており、常に群れで行動してきたため、食事を共にするものは仲間だと思う人間に刷り込まれた本能だという話を聞きました。

 また、心理学の研究によれば、食事は快楽や充実感と密接な関係にあり、それを共有する相手には好意的な感情を抱くのだそうです。これを利用した「ランチョン・テクニック」といわれる交渉の手法があり、ランチョンは本来昼食の意味ですが、それに限らず食事をしながら交渉をすると、話しの内容がポジティブになって依頼が通りやすかったりするそうです。

 「食事を共にすると親密になる」がすでに備わった人間の本能ならば、それを利用しない手はありません。飲み会や食事会くらいはプライベートで、気の合う仲間同士でやりたいと思うかもしれませんが、誰でも何人かはいるはずの苦手だけれど付き合わざるを得ない人や仲良くなりたくても距離が遠い人、その他近寄りがたい人たちと、飲食の場を使って打ち解けられれば、自分にとっては得になることしかありません。何よりも自分の身の回りの環境が良くなります。

 職場の飲み会や食事会に対しては、あまり身構えたり避けたりせず、もっと気楽にうまくかかわれば、結構よいビジネスツールになると思うのですがいかがでしょうか。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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