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誰がやっても変わらないはずの「雑務」で見える仕事能力
仕事の中には「雑務」と言われるものがたくさんあります。
「雑務」の定義を調べてみると、「本来の業務とは直接関わらない細かいこと」「種々雑多な事務」などとあります。書類作成とか、職場の清掃作業とか、その他単純作業のようなものを指していることが多いでしょう。
イメージとしては、「誰がやっても結果が変わらない仕事」「付加価値を生み出さない仕事」という感じではないでしょうか。
経営者をはじめ、取締役や部門長など会社の上席にいる人は、できるだけ「自分でなければできない仕事」に集中すべきで、誰がやっても変わらない「雑務」は、できるだけ他に人にやらせるべきだと言います。実際「雑務」のようなことばかりに関わり続け、本来やるべきことをおろそかにしている経営者や管理職を見かけることがありますから、自分の役割、立場、本来やるべきことをよく考える必要があるのは確かです。
そもそも付加価値を生み出さない仕事に高い賃金を払うことはできませんから、相対的に高給の上席者が「雑務」にかまけているのは好ましくありません。
ただ、会社の中の「雑務」を、実際に誰がやっているかを見ていくと、意外に上位の立場の人がやっていることが多いです。中小零細企業では特にそうですが、何人かの社長に話を聞くと、社員はみんな定常業務を持っていて時間的な余裕が少なく、何かあった時に臨機応変に動けるのは実は社長が一番だったりするので、意外に雑務を担っていることが多いそうです。
先日オフィスの引っ越しをしたある会社では、業者選定などはお金が関わるので社長自身がやったものの、以降を任せられる社員がおらず、備品の廃棄や購入、実施までのスケジュール調整や社員に向けたその都度の事務連絡など、細かい段取りや雑務的なことまですべて社長が仕切ったと言っていました。
日々の業務でも、数値の集計、報告書や書類の作成といったことは、管理職の仕事ということが多いと思いますが、これもそれほど付加価値を生み出さない定型的な事務処理ということでは、やはり「雑務」の一種です。偉くなったからと言って「雑務」をやらずに済ますのは、なかなか難しいことです。
ただ、私が見ていて思うのは、経営者らしい、管理職らしい仕事をして役割を果たしている人ほど、「雑務」のような仕事も緻密で丁寧にこなしていることです。誰か他の人に引き継いだとしてもわかりやすく、整理整頓されていて、ミスはほとんどありません。仕事の性質上、確かに付加価値は生みませんが、引き継ぎの停滞や手戻り、作業の重複などが起こらないので、仕事の効率を阻害しません。
一方、「雑務」を文字通り雑に扱う人は、その他すべての仕事が同じように雑な傾向があります。結果として顧客からの評判があまりよくなかったり、社内でも今一つ信頼がなかったりします。
仕事上の成果も当然それほど上がっていないことが多く、もしもそれなりの成果があったとしても、周りの人からのフォローや尻拭いを数多く受けています。さらに本人にはフォローされている自覚がありません。
こうやってみていくと、「雑務」がきちんとできない人には、「自分しかできないような付加価値を生み出す仕事」はできません。仕事の基礎能力というのは、やはり「雑務」のような基礎的なところで見えるものではないでしょうか。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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