AIによる小説執筆、実用化に近づく Books&CompanyのAIが文章生成に成功

2018年12月11日 18:20

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AIが小説を書く様子。(画像: Books&Companyの発表資料より)

AIが小説を書く様子。(画像: Books&Companyの発表資料より)[写真拡大]

 電子出版ベンチャーのBooks&Companyは10日、カンボジアのキリロム工科大学と提携し進めているAI(人工知能)による小説執筆プロジェクトに関して、文章を生成できるまで開発が進んだことを明らかにした。

【こちらも】人工知能を使って執筆した小説が星新一賞一次選考を通過

 このプロジェクトは、AIに小説を執筆させる研究に留まるのではなく、実際に商業出版することが最終目的。過去に、公立はこだて未来大学の松原仁教授が率いる「きまぐれ人工知能プロジェクト作家ですのよ」のAI創作小説が、「星新一賞」の1次審査を通過するなど、各所で研究開発は進むものの、いまだ社会実装には至っていない。

 今回、研究成果が発表されたプロジェクトは、5月にスタート。AI創作小説をいち早く書店に並べることを目的に、開発を進めている。小説を創作するAIテクノロジーは、自動翻訳、AIスピーカー、チャットボットなどと同様の、自然言語処理と呼ばれるジャンル。プロジェクトでは、この技術を駆使することで、人間が書いたものと変わりの無い物語を創るAIプログラムを開発することを目指す。そのためのプロセスとして、「データ付与」から「データ分析」、「解釈」などを経る「自然言語理解」を第1フェーズとしている。

 7月に実施された村上春樹著「象の消滅」の自然言語理解のトライアルでは、物語の解釈指標である「正解釈率」が88%、ファクトに関する「正答率」が84%と好成績を記録し、人工知能らしく、抽象的な質問にも明確に答えたという。

 これにより開発は第1フェーズから第2フェーズに移行。次の開発では、何度もチューニングを重ねて、「物語の構築」から「物語の詳細の生成」、「文章生成」の行程を経て、最終的に「物語の創作」へと進むのだが、10月からスタートした「自然言語生成」の行程では、ある名作小説の続編を書くためのプログラムを開発。今回、11月下旬にその文章生成に成功したことが発表された。17秒間で原稿用紙約5枚になる、75文を生成する成果を挙げたという。これにより、実用化に向けてまた一歩近づいたと言えるだろう。

 アメリカでは、AIが描いた絵画が、43万2,500ドル(約4,890万円)で落札されたという。小説や絵画、映像、音楽の分野で、AIクリエイターが活躍する未来はそう遠くない。

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