出版取次の日販とトーハンが物流協業に向けた検討を開始 流通の抜本改革なるか

2018年11月19日 20:44

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日本の出版流通の未来はいかに。(c) 123rf

日本の出版流通の未来はいかに。(c) 123rf[写真拡大]

 日本出版販売(日販)とトーハンが協業へと向かうかもしれない。出版取次の業界最大手である日販と、同2位であるトーハンが、物流協業に向けた検討を開始する基本合意書を2018年11月7日に締結していた事が発表された。20年以上に渡って深刻な下落傾向の続く出版業界の流通に抜本改革という風を通せるかどうか、注目が集まっている。

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 出版取次というのは、日本における出版業界の構造を理解する上で絶対に避けては通れない存在である。その機能は、最も単純化して説明すれば出版社と書店との間をつなぐ問屋の役割を担うものであるのだが、他の業界では類例をあまり見ない特殊な役割がいくつかある。

 日本の出版流通は、事実上は取次が主導する体制にあると言われている。それというのも取引の仲介、配本・返品の管理、代金回収などを取次は一手に引き受け、また信用保証の役割も担うため、再販価格維持(新品の本がどこでも同じ価格で売られているのはこれによるものである)、委託販売制度などの日本独自の業界制度を維持・管理している立場にあるからだ。

 日本の出版取次の歴史を俯瞰するには少々紙幅が足りないが、大まかに言えば久しく漸減傾向にあり、最盛期に100あったと言われるものが2017年には21社となっている。2015年に当時業界4位の栗田出版販売が民事再生法適用申請、2016年にそれに次ぐ大洋社が破産するなど、業界は日販とトーハンの寡占化が進む状況にある。

 出版物の売り上げは1996年をピークに減少を続け、2017年度にはピーク時と比べて52%の規模になっている。電子書籍の台頭などの問題については語るまでもないところであるが、もう一つの問題としては輸送コストの上昇による流通効率の悪化が深刻だ。トーハンは、今後プロダクトアウトからマーケットインを目指した抜本的な流通改革をはかる、としている。

 果たして新時代の光はどこに輝くのであろうか。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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