五島列島に自生するツバキで地域活性化 MTGなどが会社設立

2018年11月2日 16:18

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五島列島に数多く自生するツバキ。地域活性化への期待を担う(写真:MTGの発表資料より)

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 長崎県五島市に古くから自生する「五島椿」を使った事業を展開し、地元の雇用拡大や地域活性化につなげようと、ブランド開発会社のMTG(名古屋市中村区)などが1日、新会社「五島の椿」を設立した。五島列島は古くからツバキ油の生産が盛んで、約900万本のツバキがあるとされる。しかし、島民の高齢化や過疎化によって椿油の生産量は減少を続けており、同社は生産用にツバキの管理を行うほか、ツバキの花や種子、葉などを使った商品を開発。列島全体の活性化を図るという。

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 MTGは、松下剛社長が五島市出身だったこともあり、2013年から五島のツバキについて、花や種、葉、枝、根のほか、島における歴史や文化などさまざまな観点から調査研究を行ってきた。こうして得られた成果をもとに、五島市や長崎県、長崎大学、商工団体などと産学官連携を行い、ツバキの魅力を島の活性化につなげようと新たに会社を設立することになった。新会社の「五島の椿」は資本金5億円で、MTGと立石光徳・五島市商工会会長、日本経済新聞社元会長で長崎県出身の杉田亮毅氏が出資。社長にはMTGの松下社長が就任した。

 五島列島は、暖流の津島海流の影響で気候が温暖なため、ツバキの生育に適し、島内各地にツバキの林が広がっている。ツバキ油の産地としても古くから知られ、江戸時代には五島藩から幕府に贈られたとの記録もある。しかし、近年は高齢化と過疎化によって生産者が減少。島内には約550ヘクタール、900万本のツバキがありながら、自生のツバキのうちわずか1.4%しか活用されていないという。このため、五島市は作業道や採集態勢の整備を行って利用率を上げるとともに、ツバキ油を使った商品の開発などを進め、ツバキ油の年間売り上げ6億円の目標を立てている。

 同社も、こうした地元の取り組みと歩調を合わせて、ツバキ油を使った化粧品などの商品化を進める。また、ツバキの花には酵母が含まれており、この酵母の安定生産と商品化にも取り組んでいくという。

 新会社について、松下社長は「五島列島のツバキにはまだ見ぬ可能性と多くの夢が詰まっている。ツバキの可能性を世界中に広げるとともに、日本の新たな産業の可能性も切り開いていきたい」と話している。

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