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日本電産、売上・営業益とも四半期ベース過去最高 車載や家電などが好調
2018年度2Q(3ヶ月)の直前四半期比増減分析
永守重信氏:おはようございます。いつものように資料はお手元に回っておりますので、ポイントについてお話し申し上げたいと思います。
直前四半期比較です。3ヶ月の直前比較を見ると、マーケットにおける現状のトレンドが非常にわかりやすいと思います。
やはり車載などといったトップラインが少し(落ち込んでいます)。もちろん夏場のシーズンオフや、休みが多かったという一般的な言い訳はありますが、その言い訳は嫌いですからしません。1つのトレンドとしては、吹いている風が弱まってきているということを表しています。
従って、今日の視点は、今から私が説明することは、「いよいよ日本電産が好きな時が来たな」「風が止まってきた」と(いうことです)。風が止まれば凧が揚がらないと言われますが、我々は風が止まっても凧を揚げます。凧というのは利益です。これをきちんと上げていくということです。
「そんな(吹いている風が弱まってきている)ことはありませんよ、どんどんいっていますよ」という中身のところもたくさんございます。これも逐次説明させていただこうと思っております。
精密小型モータ:HDD市場の中長期トレンド
まず、その前提の話を聞いていただくと非常にわかりやすいと思います。従って、少し飛びまして、12ページからやっていきます。
HDDのマーケットについては、すでに過去から何回も申し上げてきておりますが、まだ根強いHDDファンの方もおられますので、これも少し説明しておきます。
毎回中長期のトレンドを数字で表していて、2018~2020年は少し修正をしております。そんなに大きな数字ではありませんが、2018、2019年はアップサイド、2020年はダウンサイドと、従前の想定からは微修正をしております。
精密小型モータ:HDD市場の短期トレンド
結果的に数量のことを言っている時代ではないと申し上げているわけなので、明らかにPCマーケット向けのプロダクトミックスはどんどん落ちていって、今後も落ちると(思われます)。極端なことをいうと、なくなると想定をしておいたほうがいいわけであります。
精密小型モータ:NL(ニアライン)ドライブの伸長
それに代わって、結果的にNL(ニアライン)ドライブの市場が非常に堅調に数量を増やしてきています。
また、それがマージンの関係で平均単価の上昇などといった違った現象があらわれてきているので、我々サイドでも数量が落ちても原価率を改善して、収益を上げていこうと思っています。
着実に工場も再編成し、このNLドライブ市場の成長性とマージン性を改善して、収益をきちんと確保するというよりも、さらに増やしていくという状況です。
このグラフを見ても、過去から説明してきているとおりになってきています。今後もマーケットの状況は数が減ってもマージン率はそんなに大きな影響を受けないということで、キャッシュ・カウ(稼ぎ頭のビジネス)の典型的なものになってきています。
従来の工場も転換がどんどん進んでおります。固定費も下がってくるため、計画以上の収益の確保ができると見ております。
精密小型モータ:その他小型モータ
15ページのグラフでは、一般DCの関係で第1四半期は少し落ちましたが、またこの第2四半期から力強い増加現象が起きています。
このポイントは、5Gのマーケットの拡大などによって、冷却ファンの需要が非常に拡大してきているということがございます。今後、熱対策として、DCブラシレスモータのなかでも、この冷却ファンのマーケットが非常に力強く増えていくと(思います)。
ですから、単なるファンだけを売るのではなく、サーマルシステムとして付加価値を上げていって売っていくマーケットに非常に力を入れてきております。今の5G通信、ビッグデータ、CPUの搭載等において、これは非常に大きな需要があり、この工場もどちらかというと今増強しています。
TOB案件:台湾CCI社に対する株式公開買付けを開始
最近は、台湾のCCI社に対する株式公開買付けを開始しました。50パーセントを超えると独占禁止法の問題もありますから、一応(発行済株式総数の)48パーセントということで(上限を設定しています)。最近では、筆頭株主(として)でもいいですし、あるいは50パーセント未満でも、早く経営権を握って、独占禁止法がとおってから全部買い付けるというのも1つの方法です。
しかし、経営をきちんとやって、製品化を進めたほうが早いと(考えました)。製品化に時間をかけて、独占禁止法がとおれば持株比率を上げていくというやり方に変えたほうが(いいと思います)。
完全に100パーセントにするために、その間に非常に空白が起きるようなM&Aのやり方は、マーケットの変動が早い時に決していいわけではないということで、手法を一部変えてきています。
とくに最近は独占禁止法は政治の問題もからんで、非常に複雑な関係になっております。従って、まずはきちんと経営をやると(いう方針です)。その間の空白をつくらないという点から考えても、こういう手法が一番いいのではないかと思っております。
四半期別の業績推移(車載、家電・商業・産業用)
今我々が今後の成長のみならず収益の高さに非常に重点を置いてやっている車載と家電・商業・産業用のところです。のちほどトラクション用モータの関係でも説明しますが、現状の車載分野は活況を呈しておりまして、投資も非常に大きな投資になってきています。また、開発人員を中心に何百人単位で人員の増強が進んできています。
ついこの間まで、「いったい、車載の営業利益が10パーセントになるのはいつなんだ?」などと言われていました。しかし、このグラフをご覧いただくとわかりますように、約束どおりに収益が上がってきています。車の部品は儲かるものだということをわかっていただけるときがだんだん近づいています。
私は、営業利益率は20パーセントまで必ず伸びると思っています。もちろん一時的な減少で、売上に変動はございます。しかし、売上が落ちても利益は計画どおりに進み、過去最高を記録していけると思っています。
また、家電・商業用につきましても、昨年LS(ルロア・ソマー社)・CT(コントロール・テクニクス社)という赤字に近い会社を買収して、(その数字を加えても)すでに10パーセント台の利益が常に上がってきています。現在、吉本(浩之)新社長がとくにここに力を入れています。家電・商業用の利益が15パーセントになってきたら、吉本がここへ出てきて発表します。
ここ(決算説明会)での発表は、「他人がやったことを代替で説明するなんて馬鹿なことをするなよ」と思っております。ここに来て、前任者のやったことを「私がやりました」と言うのではなくて、「これは私がやったんだ」「私がこういう手法で変えて、利益が2倍になった、3倍になった」「私が尻を叩いて、これだけ業績を上げたんだ」ということを説明するのが正しいと思っています。
今私が説明しているのは、私がやっていたことです。次に出てくる人には、「前の永守さんは(利益率を)10パーセントぐらいまでしか上げられなかったけれど、私があっという間に15パーセントにしたんです」という話をしてもらわなければ、こんなところに来て説明してもらう必要はないわけですね。
そう遠くない範囲で、ここへ新社長が出てきて、ACIMとAMECの利益を大幅に上げた説明を胸を張ってできるように、必死の体制で対応しているのが、現状の姿です。
今、中国・アメリカとの貿易戦争で、(新聞には)非常にいろんなことを書かれています。いつものように、いいことがあると悪いことがあるものです。中国から輸出すると関税がかかるので、お客さんは大変困っていらっしゃいます。
だから、我が社では中国だけでなく、メキシコでも輸出できるようにしています。日頃から申し上げているように、場合によってはベトナム、ルーマニアなど、ご指定のところはどこからでも同じものが輸出できます。
今回も、新聞では、中国の製品を無理やりメキシコに持ってくるのではないかと書かれていますが、そんなことはまったくありません。お客さんから「今と同じモーターを、中国製ではなくメキシコ製に変えてもらえないか」と言われるため、それなら喜んで、同じモーターを作っていますからお出ししましょうと(いうことです)。
しかし、4M変動(MAN(人)、MACHINE(機械)、MATERIAL(材料)、METHOD(方法)という4つの要素を変更すること)で、生産地を変えなければいけません。そうすると部材も少し変わりますから、その認定をこの7月ぐらいから受けてきて、それが通ってくると、どんどん切り替わってきます。
そこでタイムラグが少しあるので、今のような売上ではございます。エアコン関係などでも、中国製には25パーセント関税がかかります。その単価の大きさは無視できませんし、車関係のところも同じですから、今、もうだいたい倍増しています。
新工場を作っても間に合わないぐらいまで引き合いをいただいて、四苦八苦で供給の体制を組んでいます。中国製のアメリカ向けのものは減りますが、今度はメキシコ製のものをアメリカに納入していって、全体のバランスをとっていきます。
トラクションモータなどのスペースも足りませんし、ECも足りませんから、中国の工場では、新たに中国向けのものに転換をしていきます。今、中国にもけっこう大きな投資をしていますから、中国への投資を減らしてメキシコに投資を変えていこうということではありません。
今後も、政治の問題や、いろんな問題が起きますから、そのときに右往左往してというのではなくて(工場を分散して備えています)。今年のアメリカと中国の問題を受けたときに、これはこうなるぞと(思ったことは)、だいたいそうなっています。だから、早くメキシコの工場を増築しなければ、せっかくの受け皿がなくなるぞ、ということでやってきました。
これも非常に的を射た問題です。だから中国から出てくる受注は減っていますが、メキシコからの受注は今からまた非常に増えてきます。我々は世界に210ヶ所以上の工場を持っているため、世界43ヶ国に工場を分散して、どこからでも同じものを供給できますという体制を作り上げてきたわけです。
タイの洪水のときも、なぜ我々が助かったかと言うと、他の競争相手のようにタイだけではなく、フィリピンと中国に工場を持っていたからです。今の90パーセント近いシェアを取れたのは、あの大きな問題があったときに、やっぱり最後に供給してくれるのは日本電産だという信頼を得たからです。
今回でも同じことが(言えます)。これだけの工場を分散して供給できる会社は、世界に我が社1社しかない。このような強みによって、これからまた、本来落ちるべき受注がカムバックしてくるところに来ているのではないかと私は思っています。
車載:多彩なビジネス展開
今から車の中でもとくにパワートレインのように、エンジン周りのものはずいぶん増えてきます。単価が高いこともあって、パワートレイン周りは、2020年に47パーセントと書いていますが、単価も高いですから、おそらく将来は売上ベースでは70パーセントぐらいまで上がってくる可能性が大いにあります。
車載:トラクション用モータ売上高の拡大
今起きている現象のトレンドをご説明いたします。左側のグラフは、昨年の第2四半期の決算の説明です。トラクション用モータ(の売上高目標)は2025年に1,000億円と書いてありました。まだ1年しか経っていませんが、今、大きく変わっています。2025年今日時点の売上高目標も2,000億円に倍増です。これは(グループ)PSAの合弁分は入っておりません。引合件数はものすごい勢いで増えてきています。
おそらく次々と受注が確定してくる段階になっており、ポーランドやメキシコに順次工場を立ち上げていかなければならない段階にきております。半年~1年経てば、このグラフはまた全然違うグラフに変わっていくと思います。我々は現在、この分野についても多額の開発費用を投入しています。1年経てば、この分野でこの売上予想はまた倍増しているということも十分に考えられると思います。
この分野は今まさに毎日動いていると言えます。だから3ヶ月単位の決算について「なんだかこのコンセンサスに合わなかった」という意見もありますが、そんなビジネスではないでしょうと(考えています)。
時間が経てば売上と利益がきちんとここにオンされてきて、大きな売上に結びついていくと(思います)。この1年間のグラフで、これだけ変化が起きているわけですから、そういうことをしても仕方がないということです。
家電・商業・産業用:エアコン用DCブラシレスモータ増産に向けて
同じように、今までエアコンの生産もどちらかというと中国が非常に中心的にやってきました。やはり東南アジアも今非常に活発です。中近東のほうはインドに工場を作って、協議をすることになってきています。これも将来どこかで何かが起きてもフレキシビリティーを持ってしっかりと供給できる体制が着々と進んでいます。
したがって、3ヶ月でポジティブサプライズが起きるようなことが期待される業界ではありません。しかし、やるべきことはしっかりと先にやっています。
ロボット用の減速機につきましても、非常に着々と生産工場の増強が進んでおります。そして、今まで弱かったヨーロッパにも、違ったタイプの減速機の会社を5社買収しました。もうすでに発表しているものもございます。
合意に達して発表が近い、場合によっては独禁法の審査が終わるものもたくさんございます。だいたいこの分野も、おそらくすべての製品が揃って、それが供給できるということです。
現状、減速機の問題として、我々の競争相手はずいぶん受注を減らしているようですが、我々のところはまだ影響はありません。生産能力を今どんどん上げている最中です。
生産能力が上がれば価格ももっと下げられ、まだまだ強くなる方法を持っております。だから「ほかが減ってきているから(日本電産も)減っているのではないか」という愚問は、ぜひ控えていただきたいと思います。
冒頭に申し上げたように、「風がなくても凧を揚げる」。これが日本電産です。「風がなくなったから、売上が落ちたから、利益が減りました」と言わなくていいように、しっかりとがんばっていきたいと思います。
CSRビジョン2020
日本電産は今や京都では一番働きやすい会社になっています。昔のイメージを変えていただきたい。2020年には残業ゼロ。最近は京都で初めて「えるぼし」の賞をいただいて、女性の採用の中では一番人気を博しているという劇的な変化が起きております。
IR情報のWeb発信を更に充実・強化
最近、株主数、個人の株主を増やすため(に力を入れていること)です。個人でなくても、Web発信でいろんな幹部が出てきて、詳しく企業の内容を説明するというチャンスもございます。ぜひご一読いただければ会社の変化や、どのように会社が変わっているかということも、よく理解していただけるのではないかと思います。
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