DNP、カード即時発行サービスの実証実験完了 キャッシュレス社会は根付くか

2018年10月26日 21:21

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DNPのカード即時発行サービス(KIOSK端末型)(写真:大日本印刷の発表資料より)

DNPのカード即時発行サービス(KIOSK端末型)(写真:大日本印刷の発表資料より)[写真拡大]

 大日本印刷(DNP)は24日、西日本シティ銀行と共同で進めていた、「DNPカード即時発行サービス(KIOSK端末型)」を使用して銀行口座開設からICキャッシュカードの発行までを行うサービスの実現のために取り組んでいた実証実験を、終了したと発表した。

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 10月の経産省の政策特集は「キャッシュレス決済が日本を変える」だ。2020年の東京オリンピックや訪日外国人の決済需要の対応に加え、少子高齢化で労働不足に直面する日本にとって、生産性向上は避けて通れない。店舗での現金集計や管理、現金輸送、売上げの計上と納税。現金の管理リスクと不透明な流れを防止でき、ビックデータ解析による消費の活性化も期待できる。

 数十年前までは、クレジットカード決済の下限額があったのが嘘のように、今では飲料水1本でもカードの決済が可能だ。経済的な信用を必要としたクレジットカード、クレジットヒストリーや収入が担保であったカードの概念が変わる一方、現金での扱いをなくすことは新たな課題を生むのであろうか。

 プリペイドカードやデビットカードは、経済的な信用は不要だ。スマホなどモバイルウォレットでは、QRコードやバーコードを読み取る一方、フェリカなどの特殊な近距離無線通信規格に依存しない。つまり、スマホ上のアプリのみで、決済システムを構築できる可能性がある。

 他方、キャッシュレス決済の普及をみると、日本が2割であるのに対し、韓国では9割にも達する。先進国でも4割以上がキャッシュレスであるという。日本の現金主義の背景には、偽造の困難さからくる紙幣への信用、ATMの普及、治安の良さからくるカード利用の必然性が薄いことに加えて、カード登録の煩わしさやカードによっては初期費用や年間費用を必要とし、消費動向などの個人情報の流失や衝動買いへの対策からカード利用を控える向きもある。

 政府は、2025年に向けてキャッシュレス決済比率を現状の2割から4割という野心的な目標を掲げる。今回の発表は、金融庁が2017年9月に設置した「FinTech実証実験ハブ」の支援を受けた実証実験の結果発表だ。

●KIOSK端末の実証実験の概要

 銀行口座開設からICキャッシュカードの発行まで行うサービスを実現するため、KIOSK端末に搭載した顔認証技術を用いた本人確認に係る実証実験を4月から9月まで実施。参加者は、西日本シティ銀行来店者等、任意の生活者1,000名以上という。

 本人確認の信頼性を確保しつつ、生活者の利便性と銀行業務の効率性を図れるかを検証。来館者の認証は、運転免許証とカメラで撮影した顔写真とを照合することで実現。実験結果では、著しく設備照明が暗いなどの設置環境では、本人を誤って拒否する可能性はあるようだが、銀行店頭での実験で得たノウハウを利用すると誤拒否率を低減できたという。

 他方、本実験で入手した顔写真データ及び顔写真を用いて10万通り以上のシミュレーションを実施し、最も懸念された誤受入が発生しないことを確認した。

●生活者の利便性や銀行事務の効率性の検証

 生活者はKIOSK端末の操作を平均2分で完了する一方、銀行業務での本人確認書類の真正性確認となりすまし防止が的確に行われることを確認。また、運転免許証のデータ取得などは、金融庁から法令への適合の道筋である改正規則案を提供されている。

 少子高齢化の上で、スマホ等に不慣れな高齢者や障害者に対する報告がないのは残念だ。スマホを扱えないのがマイノリティになる中でも、過疎地で都会のようなインフラが安価に設置できる可能性にも研究が進むことが必要だろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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