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自分で「完結」できない人たち
つい先日ですが、最近独立して仕事をし始めた人が、こんなことを言っていました。
「会社員が恵まれていることがよくわかった」といいます。「今まではいかに周りからサポートしてもらっていたかということを思い知った」のだそうです。
これは独立すれば当然ですし、会社員であっても小さな企業であれば同じようなことですが、自分の身の回りのことは、基本的に全部自分でやらなければなりません。この人もそれは十分わかっているつもりでしたが、実際に独立してみると、そのやらなければならないことの量が、自分の想定を大きく超えていたそうです。
それまでは比較的大きな企業にいたこともあり、例えば契約関連は法務、事務手続きは総務や庶務、IT関連は社内システムなど、ほとんどの仕事が細かく分業されています。何かわからないことがあっても、必ず社内にそれを知っている人がいますし、それに関する作業を代行してくれたりもします。
出張するとなれば、交通機関や宿の予約をしてくれたり、様々な雑務のようなことは誰かが代わりに面倒を見てくれたりします。細かいことを手伝ってくれる部下や同僚も身近にいます。
そんな環境に慣れきっていたため、いろいろなことをいざ自分でやるとなると、よくわからないし面倒だし、そういうことの多さに面食らっていて、とにかく苦痛でたまらないのだそうです。
私も同じように独立して仕事をしている立場ですから、同じように何から何まで基本的には自分でやらなければなりません。その量は確かにたくさんありますが、実は私はそれを苦痛と思ったことはありません。
その理由は大きく二つで、一つは「自分に身の回りのことは自分でやりたい性格」ということ、もう一つは「自分のことは自分でやる職場環境で育ってきたから」ということです。
それまでも自分でやってきましたし、そもそもそれが普通だと思っていたので、違和感はほぼありませんでした。
私が最近感じていることに、「自分でやるべきことを自己完結できない人が増えている」というものがあります。
指示と命令ばかりで自分では手を動かさず、指導やアドバイスなどといって口先だけが動き、誰かに頼らなければ、自分の身の回りのことが「完結」できません。なぜそんな人が増えたのかを考えると、これは私の周りにいる人のタイプが変化してきたせいかもしれないと思っています。
一つは自分の年令と合わせて周りの年令も徐々に高くなっていることで、行動力が落ち、代わりにオジサン的な横柄さが増して、他人に命令して自分のことをやらせるのに躊躇がなくなっています。
もう一つは、仕事で付き合う関係者に、大企業出身者の比率が増えてきていることですが、これは、周りが何でも面倒を見てくれて、自分で「完結」する必要がない環境に慣れ切っているからだと思っています。
組織に属していれば、お互いがお互いをカバーし合うのは当然ですが、そのことに疑問を持たずに染まっていくと、いつの間にか自分のことを自分で完結できなくなってしまいます。染まっていることに気づいていないとなれば、それはさらに不幸です。
本来自分でやるべきことを「自分以外の誰かに指示する、任せる、やらせる」というのは、効率を考えると必要なときはありますが、私は「自分のことは自分で完結できる」という前提があってこそだと思っています。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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