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スルガ銀行第三者委員会報告書を読み解く (下) スルガ銀行に明日はあるのか?
銀行の支店は地域繁華街の一等地の路面店であることが多い。周辺の商店街からは、「書き入れ時の土日にシャッターを下ろすなんて感じ悪い」と言われても、人の集まるところで営業する安心感には代えられない。
【前回は】スルガ銀行第三者委員会報告書を読み解く (中) 職員の不正は銀行もお客も苦しめ続ける
それに対して、スルガ銀行には空中店舗が多い。ビルの上層階に支店を開設すると聞いた当時は、「馴染みのない銀行に、エレベーターに乗って預金に行く人がいるのか?」と疑問を抱いたこともあったが、今回の一連の報道で疑問は氷解した。個人ローンを推進して、融資金の中から「歩積み両建て預金」をさせればいいのだ。地道に口座開設の努力をする必要はないし、ローンの利用者以外は利用するお客も限られる。
個人融資に特化する経営を続けて来たのだから、法人融資は疎かにされ審査経験がある職員も限られるだろうし、何よりも融資対象とする基盤が脆弱であることは明白である。
スルガ銀行では年度内の投資用不動産融資を凍結する方針だ。投資用不動産融資以外の活路について確たる情報はないが、世情一般に伝えられている「法人融資も住宅ローン等も、ほとんど利ザヤの余地がないギリギリの水準で推移している」状況を超える商材があるとは考えられない。今までバブリーでメタボな経費遣いをして来たスルガ銀行には厳しい季節が訪れる。
他の銀行も厳しい経営環境を乗り切るため、「肩代わり」と称する他行取引の奪取を狙っている。金利の高いスルガ銀行のお客は他行から見れば、魅力たっぷりの美味しいお客だ。スルガ銀行の取引に紛れている、入居率が高くて担保条件の良い先を選別して金利引き下げを条件に交渉すれば、昨今のニュースにウンザリしているお客は渡りに船である。その結果、スルガ銀行に残されるのは入居状況も担保条件も悪いお客ばかりとなる可能性すらあるのだ。
目下最大の関心は、現在もなお進行中の金融庁の検査と第三者委員会の調査結果が融合してどんな化学反応を見せるかである。アンタッチャブルと思われていた創業家との関りが希薄となった今を除いて、スルガ銀行が生まれ変わるチャンスはない。金融庁の行政処分がどんな形で下されるのか?下落を続けるスルガ銀行の株価が曲がりなりにも未だに500円前後を保っているのは、生まれ変わりへのかすかな期待ではないのか?(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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