生き残りへ必死のタクシー業界 ライドシェア阻止へ、グループ化進む!(後編)

2018年8月24日 17:46

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 「全国タクシー」のライバルとなるのが、国際自動車などタクシー7社とソニーの連合で、5月31日にはソニーの関連会社を加えた9社により、「みんなのタクシー」の設立を発表した。

【前回は】生き残りへ必死のタクシー業界 ライドシェア阻止へ、グループ化進む!(前編)

 この新会社は、人工知能(AI)技術を活用した新たなタクシー関連サービスの準備を進めている。AI技術の導入により、タクシーの需要や道路の混雑などを予想する。配車後の待ち時間短縮により使いやすさを高め、需要予測のサービスなどを提供する見通しで、18年度中のサービス開始を目指している。タクシー7社は顧客の利便性向上を最優先にして、必要な時に必要な台数を用意するため会社の枠にこだわらない配車サービスの運用を目指すとしている。7社は東京都内を中心に合計で1万台規模の車両を保有している。

 日本のタクシーマーケットは最盛期比で半数にまで落ち込み、この動きは今後も続くと見られているが、約1兆7,000億円を売り上げる規模は今もなお世界で注目の市場だ。国交省は安全面や利用者保護を大義名分に白タク禁止の見解を崩さないが、タクシー業界も挙げてライドシェアに反対して共同歩調をとっている。

 それでもソフトバンクは、7月19日に中国配車サービスの大手企業である滴滴出行との合弁会社の設立を発表した。タクシー会社を対象にした配車プラットフォームを18年秋頃に提供する。世界で5億人以上が利用している滴滴出行の効率的な配車サービスをアピールして、需要の喚起を狙う。タクシー各社の警戒感を理解した上で、将来の「ライドシェア解禁」を期待し、マーケットの分析を進めると共にタクシー業界との意思疎通の形成を図る考えだ。

 ウーバーもまた7月21日、兵庫県の淡路島で島内タクシー事業者との配車アプリの実証実験を開始した。実験を積み重ねてタクシー配車システムを日本市場に売り込む目論見だ。すでに日本の複数の都市で20社以上のタクシー事業者と契約に向けた協議を継続しているという。

 両社に共通する思惑は日本市場で信頼を得て、白タク行為とみなされているライドシェアの解禁だ。タクシー業界と監督官庁が足並みをそろえている状況を冷静に分析して、急がば回れ作戦を選択したと思われる。

 国交省は「安全と利用者保護」が白タク禁止の主たる理由としているが、その課題がクリアされた後のライドシェア解禁は、タクシー業界にとって脅威だ。乗車料金は大幅な低廉化が進むとみられており、中には、利用料金を3~5割ほど引き下げるとの試算もある。

 タクシー業界が、初乗り運賃の見直し、相乗りシステムの実証実験、運賃を乗車前に決める仕組みの導入検討、アプリの利便性向上、新型タクシー専用車両の投入等、矢継ぎ早に使い勝手の向上を目指している背景には、ソフトバンクとウーバーの動向に対する強い危機感がある。果たしてどんな方向に進むのか。東京五輪の時期をにらんだせめぎ合いが続く。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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