【小倉正男の経済コラム】何にでも口を挟むトランプ大統領、今度は四半期決算

2018年8月23日 10:28

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■四半期決算を半期決算にせよと変更を要請

 トランプ大統領が変なことを言い出している。  「利上げが気に入らない」こちらも慣れっこで、そんなことに文句をつけるのかと――。

 トランプ大統領のキャラクターなのだろうが、細かいことに口を挟んでいる。

 その矢先、ここにきては、企業の決算発表を四半期、つまりいまは3カ月ごとにディスクローズしているわけだが、それを半年(6カ月)にすることを検討するようにSEC(証券取引委員会)に要請した。

 トランプ大統領は、「これにより柔軟性が増し、資金の節約もできる」とツイートしている。

 トランプ大統領は、多くの経済界首脳との協議を経てSECに変更を検討するように要請したとしている。  経済界、例えばペプシコの経営者(CEO)あたりが、本人が言うには、より長期的な視点に立った企業のあり方から提起したというのがコトの起こりのようだ。

■四半期決算は極力サプライズを防ぐ制度

 四半期決算は、投資家にとってグッドサプライズ、バッドサプライズを極力なくすためにつくられてきた制度である。

 つまり、四半期決算以前の半期決算、あるいは年1回の決算では、開けてビックリのサプライズが伴っていたわけである。おそらく、バッドサプライズのほうが圧倒的に多かったのではないか。

 これでは、投資家が恐怖心を持ってしまうことになる。四半期決算ですら、決算発表は何が出るかサプライズがあるものだ。6カ月ごとの半期決算ではなおさらである。

 IR(インベスター・リレーションズ)からみたら、四半期決算は必要最低限のディスクローズにほかならない。しかも、アメリカのみならず、日本でも定着しているといってよい制度である。

■小鮮を煮るがごとしの真逆をずっとやっているのがトランプ氏

 大国を治めるは小鮮を煮るがごとし、といわれるが、トランプ大統領はその真逆である。鍋のなかの小魚に手を突っ込んでゴチャゴチャにするような所業をずっとやっている。

 日本の経営者にこのあたりを聞いてみたが、意外なことに、トランプ支持を語る筋が少なくなかった。  「3カ月ごとの決算は大変だ。手間や人手がかかる。トランプ大統領はどうかと思うことが多いが、決算についてだが、四半期は面倒なのが実感だ」

 トランプ大統領には困ったものだと思っているわけだが、一歩下がって、このあたりの「本音」部分がトランプ支持者の基盤なのだろう。

 日本の経済界の場合、IRについて理念があって四半期決算を行ってきているわけではない。極論するとアメリカがやっているからやっているにすぎない。  トランプ大統領の指令、いや要請で、アメリカが四半期決算を辞めて半期決算に変更されたら、日本も半期決算に後戻りするのだろうか。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事(1971年~2005年)を経て現職。2012年から「経済コラム」連載。)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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