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スルガ銀行の不正融資と、東日本銀行の業務改善命令に、違いはあるのか?
世間には銀行や銀行員に対する根拠のない信頼感や信認がある。聞きなれない企業のPRには、警戒心を隠さない人(当たり前だが)が、銀行員から聞いた話には何となく賛同してしまう。
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例えばバブルの頃、銀行は貸出先の獲得競争を行い、事務所ビルや立体駐車場の提案セールスを行った。提案の手順は簡単で、利便性の高い地域に遊休地を所有している個人や企業に対して、「遊ばせておくのはもったいない!」などと言って、当該地に建物を建設することによる投資プランを提案し、融資先に仕立て上げることであった。
提案された方は、不動産会社やブローカーの同様な提案に対しては「まゆつば」な話として聞き流していたのに、銀行からの提案となると「やってみようか」と急に前のめりになる。不思議なことに、銀行からの提案であれば市況や金利動向を分析し、市場調査まで行ったうえで作成された、安心できる長期間の収支計画だと理解するようだ。一種の思考停止状態に陥る。実際は、担当者が目先の成果を嵩上げするために、相手かまわず手当たり次第に同じような提案をしていた。その結果、地域の需要が飽和状態に達し、バブル最盛期には何とかやっていた事業も、バブル崩壊とともに化けの皮が剥がれた。
自然災害の伝承が難しいように、金融取引の失敗事例を伝えることも難しい。逆恨みととられたら話の信頼性が担保されない。結局、何年か何十年かのサイクルで同じようなトラブルが発生する。
女性を対象にしたシェアハウスである「かぼちゃの馬車」に対する融資事例でも、銀行に対する信頼感を逆手に取ったかのような不届き者が跋扈したようだ。スルガ銀行の経営者が支店に課す過剰な利益目標をクリアするため、改ざんされた証明書類であることを承知の上で、必要としていない高金利のローン利用を条件とし、ローンの融資金を“歩積み両建て預金”そのままに定期預金にしていた例もあるようだ。その場合のローンの金利は6~7%で、定期預金が0.01~0.02%とすると、街金もびっくりのぼったくりだ。そんなとんでもないことが、支店長の号令で当たり前に行われていた支店もあるらしい。銀行員だから“真面目”な訳ではない。適切な環境にいる場合には、不愉快で恥ずかしく、心の痛むことをする必要はない。必要以上に追い込まれると、“顧客第一”も“法令順守”もどっかに行ってしまうだけだ。
東日本銀行でも取引先の財務内容を改ざんしたり、根拠不明な手数料を徴求したり、必要額以上の融資を実行して余った分を“歩積み両建て”の定期預金にさせていたことが発覚した。金融庁が17年末から検査を行い、融資の実態を詳細に調査して判明したため、13日に業務改善命令が出された。報道されているところによると、共にコンコルディアFGを構成している横浜銀行の収益力に追い付くために、過大な目標設定をしていたという。中身はスルガ銀行が遥かに深刻だが、「貧すれば鈍する」という筋書きにはスルガ銀行も、東日本銀行も大差ない。東日本銀行はもちろん、コンコルディアFG全体のガバナンスにも疑問を感じる状況だ。
そのコンコルディアFGの直近の株主総会で、旧大蔵省(現金融庁)出身の寺沢辰麿氏が社長を退任し、横浜銀行生え抜きの川村健一氏が昇格した。随分タイミングのいい、計ったような人事だった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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