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「指示命令型スポーツ」と「自己判断型スポーツ」の違いという話
「高校野球は他競技の指導者の目にはどう映るのか」という記事がありました。
「なんで丸刈りなんですか?」とのタイトルがついていて、あるラグビーの指導者は「僕の大きな疑問の一つ」で、「髪を切ったら頭が守れないから、うちは丸刈り禁止です」と言っています。
高校ラグビーでは今は丸刈りをほとんど見かけないそうですが、野球では髪を伸ばしていると悪いような印象があり、「もし負けたら、髪なんか伸ばしているからだと言われそうで大変」と言っています。
また、さらに考え方が古いと指摘されるのは女子バレーだそうで、ある名門校の監督によれば、昔は夜の12時まで練習しているようなチームがあり、練習時間が長くて殺気立っていて、たぶん体罰も一番多かっただろうとのことです。
この監督は「昔オリンピックで金メダルを取ったような競技は同じ傾向があり、過去の成功体験があると、強かったのだから海外に学ぶ必要はないなどと内に閉じこもり、いつまでも古い体質を変えられない」と言っています。過去の成功体験から抜けられない弊害は、他でもよく聞く話です。
あるサッカーの監督は、かつてブラジル遠征をしたときに、いつもの調子で選手を罵倒したら、ブラジル人に「おまえ、逮捕されるよ」と言われてハッとしたそうです。サッカーは競技人口が多く、海外にたくさんの手本があり、その情報が簡単に手に入る昨今では、練習内容は昔と雲泥の差があり、「今はスパルタなんて言っている指導者はいないのではないか」とのことです。
他にも試合日程の話、練習時間の話など、興味深い話題が様々に語られていました。
この記事の中で、私が特に気になったのは、これもラグビー名門校の指導者が語っていた「選手が監督の指示とは違う選択をしてもいい」という話です。
「アメフトはラグビーに似ていると思われているが、アメフトはプレー毎に監督やコーチが指示を出す“指示命令型”のスポーツで、対してラグビーは、試合が止まらず指導者が頻繁に指示を出せないので、グラウンドでは選手が考えなければならない“自己判断型”スポーツであり、選手が監督の指示と違う選択をしても全然問題ない」とのことです。
野球では監督の考えを選手がどれだけ理解しているかがポイントになるが、ラグビーでは「半分くらいは教えても、それ以上は自分で考えられないとトップレベルについていけない。選手のキャパシティーを監督で埋めてはいけない」とのことでした。
この「指示命令型」と「自己判断型」という話は、企業における仕事の話でも、特に最近よく出てきます。
多くの会社で「自律人材」が望ましいと言われ、これは「自己判断型」と同じですが、指導する上司は、昔ながらの「指示命令型」の人が今も大勢います。
私はここで「“指示命令型”がダメで“自己判断型”が良い」などと言うつもりはありません。この記事にもあるように、「競技特性の違い」、仕事で言えば「業務特性の違い」によって、合致するスタイルは違うのです。
例えば、スケジュールや時間、作業内容が決まっている仕事であれば、「指示命令型」で進めるのが効率的ですが、非定型、不確定な要素が多い仕事の場合、そのやり方では難しくなります。細かな指示命令がなくても、現場のメンバーが「自己判断型」で進めなければなりません。それをできるようにするためには、常に自分で考えることを指導していなければなりません。
ただ、現場でよく目にするのは、「指示命令型」に合わない業務内容をそれで進めていたり、判断の機会を与えていないために、「自己判断型」の人材が育たなかったりすることです。「指示命令型」がリーダーの振る舞いだと勘違いし、場面や仕事内容に関係なく、同じやり方をする人もいます。
「指示命令型」と「自己判断型」は、場面によって使い分けが必要ですが、それができている上司、リーダーは意外に少なく、どちらかといえば「指示命令型」に偏りがちです。そしてその偏りを本人は気づいていません。
変化が激しい今の時代、「自己判断型」の人材の重みは増しています。意図的に指示しない、教えずに考えさせることが、その育成のためには必要です。それはスポーツでも仕事でも同じことのようです。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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