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出光興産と昭和シェル、19年4月に経営統合 3年の歳月かけようやく合意成立
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出光興産と昭和シェル石油は10日、19年4月に経営統合することを正式に発表した。28%の出光株を持ち、大株主として統合に強硬な反対を続けていた出光創業家との交渉が、最終盤の交渉で合意に達した。約3年に渡った出光興産と創業家との対立にようやく妥協点見出し、新会社の社名は「出光興産」とする。石油元売り業界ではJXTGホールディングスに続く企業が誕生することになる。
【発表直後の株価は】出光興産は発行株数の5.77%を上限とする自社株買いも好感され大幅続伸
両社の発表では、昭シェルを19年3月に上場廃止、同年4月に株式交換により出光興産が昭和シェル石油を完全子会社とする。出光興産、昭和シェル、創業家が統合に向けて合意できるところを模索した最善の形が株式交換だという。将来的には合併を意識している気配があるが、大部分は詰め切れていないという印象で、今後具体化が進むことになる。新会社の商号は出光、トレードネームは『出光昭和シェル』だというところに、苦渋の思いが表現されている。
「融合し得ない異文化との統合だ」と懸念を表明していた創業家の思いもあるだろうし、何よりも過去の統合企業が大きな障害として長期間苦しむのが、企業文化と人事の交流だ。
3年間に及ぶ紆余曲折は長かった。何しろ15年7月に合併で基本合意した両社は、当時石油元売りのトップ企業として10兆8,000億円弱もの売り上げを誇るJXホールディングスの後を追う二番手となり売上高も合計で7兆6,000億円を超え、後に続く東燃ゼネラル石油とコスモ石油の行方を心配する向きすらあった。ところが、出光興産と昭和シェルの統合がお預けを食わされている間に、17年4月JXが東燃ゼネラル石油を吸収合併し、JXTGホールディングスへと巨大化していた。
3年間に市場は縮んだが、今も10兆3,000億円を超える売上高を維持しているJXTGに対して、新会社の売上高は合計で5兆7,700億円であり、2年前に思い描いていた11対8のパワーバランスからは大きく外れ、10対6へと弱小化してしまった。
しかし、決着はこれしかなかっただろう。国際的にEVへの大きな動きが進展中で、産油国のなかには、石油以外の基幹産業を模索する動きすら見られる時代だ。技術的な障壁が立ちはだかり、計画通りのEV時代が到来するかどうかはまだ読めないが、市場が縮み続けることが明白である以上、経営統合自体が目的であるということは有り得ない。期待通りの統合効果を発揮するためには、痛みも伴うのは自明のことだ。
売上の増加を目指すというよりは、売り上げの減少を他社より減らす、という難しいかじ取りが本格的に始まる。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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