人事評価は「見えている部分だけ」に偏りやすい

2018年6月19日 15:51

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 ある会社で人事評価結果の確認をするミーティングをしていた時のことです。評価者であるマネージャーたちに、それぞれが評価したメンバーたちの評価結果を確認する場でした。
 比較的小さな会社なので、それぞれのマネージャーは自分の部署以外のメンバーのことにも目が届く環境ということで、必ず関係者が一堂に会したミーティングをおこない、そこで全社員の人事評価を確定するというやり方をしていました。

【こちらも】「給与の見える化」や「360度評価」が難しかったこと

 基本的には、評価者の立場でメンバーを直接見ているマネージャーの評価が尊重されますが、ときどき議論になることがあります。
 この日もある技術者のことが話題になりました。
 直属マネージャーの評価では「知識がある」「手が早く作業の効率がよい」「仕事が早い」といっています。部門内ではベスト3に入る良い評価です。

 しかし、仕事上で関係する別のマネージャーは「仕事が大ざっぱでミスが多い」といいます。それで自部門がフォローしなければならないなど、影響があるそうです。「仕事が早い」のではなく「仕事が雑」なのではないかと言っています。

 直属マネージャーはミスの発生自体は知っていましたが、それほど重要なこととはとらえていませんでした。そのことについては簡単な注意をした程度で、本人の行動もあまり変わっておらず、相変わらずミスはときどきあるようです。
 あらためて、ミスの部分を加味した評価に見直すことになりました。

 今回の「仕事が早い」と「仕事が雑」の違いがどこにあるのかを考えると、前者は主にプロセスに着目していて、後者は主に結果に着目していたということです。
 「仕事が早い」と評価した直属のマネージャーも、決して結果を軽視しているつもりはありませんでしたが、自分の視野にはミスという結果があまり見えていませんでした。そのせいで一面的な見方に偏ってしまっていて、全体像を見誤っていたといえるでしょう。

 このように、同じ事象を見ているはずなのに、見方によって解釈が正反対ということはときどき起こります。その違いは、全体と思ってみていたことが、実は一面に過ぎなかったという視野の違いが原因になります。
 「行動的」が「落ち着きがない」であったり、「提案力がある」が「口で言うだけ」であったりしますが、本質的な評価をするためには、全体の中でどの傾向がどのくらいの割合で出ているかということを見て判断しなければなりません。

 「全体を見て評価する」というのは、意外に難しいことです。
 きちんと全体像を見ているのか、視野がある一面だけに偏っていないかを、できる限り意識しておく必要があるでしょう。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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