ロンドン自然史博物館、剥製使用の野生動植物写真コンテスト受賞作品を失格に

2018年5月5日 22:23

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記事提供元:スラド

英国・ロンドン自然史博物館は4月27日、昨年10月に実施した野生動植物写真コンテスト「Wildlife Photographer of the Year 2017」の受賞作1点について、授賞を取り消し、失格扱いにすると発表した(自然史博物館のニュース記事The Vergeの記事)。

問題の写真「The night raider」は写真家のMarcio Cabral氏がブラジルのエマス国立公園で撮影したもの。満天の星の下、餌をおびき寄せるため生物発光するヒカリコメツキの光に包まれたアリ塚に向かうオオアリクイという構図で、「Animals in their Environment」部門の受賞作品となった。

ところが今年3月になって、写真のアリクイがエマス国立公園内に展示されている剥製にそっくりだという匿名のタレコミが寄せられる。Cabral氏はこの写真の前後に撮影した写真のRAWイメージファイルを提供するなど、調査には協力的だったが、剥製を使用したという疑惑は強く否定。前後の写真にアリクイが写っていない理由を説明し、彼が生きたアリクイを見たという証人も手配したという。

しかし、哺乳動物専門家2名と剥製術専門家2名を含む科学者5名の調査チームは各自で検討の末、ポーズや形態、頭と首の毛並みなどが酷似しており、個別の個体とは考えられないとの結論に達したとのこと。剥製を生きた動物のように見せかけることは、見るものに自然の現実であると誤解させてはならないというコンテストのルールに違反する。

その結果、写真の部門賞受賞は取り消しとなり、Cabral氏の受賞者およびファイナリストの資格も取り消し、今後同コンテストへの参加を認めないことになった。既にファイナリストが発表されてしまっている現在では本番と同様のブラインド審査が不可能なため、新たな受賞者は選ばないとのことだ。 

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