5000年前のミイラから入れ墨が発見される

2018年3月16日 14:19

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●5000年前のミイラ2体から見つかった入れ墨

 古代エジプトでは、予想以上に早い時期に入れ墨の技術が存在していたことが明らかになった。入れ墨は、1900年にエジプトで発見されたエジプト先王朝時代後期のミイラ6体のうちの男女2体から発見された。動物や「S」や「L」のような文字がいくつか並んでおり、比喩的な表現を持つ入れ墨としても注目されている。

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 詳細は「Journal of Archaeological Science」に掲載されている。

●これまでの調査研究を1000年以上もさかのぼる発見

 今回入れ墨が発見されたミイラは、いずれも大英博物館が保管している。入れ墨がほどこされた男女2体は、紀元前3351年から3017年のものと推測されている。古代エジプト時代の入れ墨としては、これまでのものよりもじつに1000年以上もさかのぼる最古のものと認定された。

 また、比喩的な形状を持つ最古の入れ墨としても注目されている。

●汚れのように見えたシミを赤外線で調査

 大英博物館の研究者たちは、ミイラの再調査を行ったさい、汚れのように見えるシミを赤外線イメージングによって分析した。ミイラの皮膚の細部をより明瞭に分析した結果、男性の体には角を持つ牛や山羊のような動物の姿が確認された。

 女性の体には、肩の部分に4つの「S」のような文字、腕には「L」のような形が彫られている。

●煤を利用した墨で彫られた入れ墨

 入れ墨はいずれも、真皮という皮膚のもっとも厚みがある部分に残されている。墨は、煤が主原料となっている。

 また、ミイラが埋葬されていた付近で見つかった銅製の道具は、入れ墨を彫るためのものと考えられている。

●入れ墨の意味するものはなにか

 考古学者のこれまでの研究では、先王朝時代には女性だけが入れ墨を入れていたというのが通説であった。今回は、男女のミイラから判別可能な入れ墨が初めて発見された。これは考古学的に見ても、重要な発見である。

 しかし、考古学者のあいだでもその意味するところはまだ不明のままだという。

 「先王朝時代には、ヤギ科の動物はよく描かれていたようですが、それがなにを表象していたのかはまだ謎のままです。いっぽう、雄牛に関してはほぼ間違いなく『男性らしさ』のシンボルであったといえます」と、大英博物館の研究者ダニエル・アントニー氏は語る。

 また、トモグラフィーの調査によって、男性は20代前半で亡くなっていることがわかっている。肩から肋骨にかけて深い傷があるため、背中から短剣のようなもので刺されたと推測されている。

 女性の体に彫られた文字も、現在のところ有力といえる説はない。仮説では、宗教的なシンボルか、女性が上層階級に属していた証ではといわれている。

 いずれにしても、古代エジプト時代の文化をさらに深く理解するための一助となる発見であることは間違いない。

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