3本目の地下鉄建設中のローマで、古代の指揮官の邸宅が発見される

2018年3月8日 06:48

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●トライアヌス帝の諜報部であった可能性も

 ローマ市の3本目となる地下鉄C線の建設現場において、考古学上非常に重要な遺跡が発見された。数々のモザイク、フレスコ画で飾られた邸宅は、西暦1世紀から2世紀のものと推測されている。五賢帝の時代のトライアヌス帝とハドリアヌス帝配下の百人隊長の邸宅であった可能性が高い。また、皇帝直属の諜報機関本部があった場所だと主張する考古学者もいる。

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●2年前に発見された兵舎の一部

 地下鉄C線のアンバ・アラダム駅の建設現場では、2年前に2世紀の兵舎が発見されていた。今回の邸宅は、地下12メートルにあるこの兵舎の一部として出現した。白黒のモザイクで描かれた幾何学模様や神話の神々、ブドウをはじめとする木々の見事さは、発掘現場にいた人々を驚かせた。

 その華麗な装飾から、戦場における指揮官である百人隊長の邸宅であったと学者たちは推測している。さらに、考古学者ロッセッラ・レアはこの兵舎全体が皇帝直属の諜報機関であった可能性が高いと主張した。

●兵舎の規模は300メートル四方

 文化財保護局の長であるフランチェスコ・プロスペレッティもまた、今回発見された邸宅の重要性について疑いの余地なしとしている。建物はふたつの翼廊を擁し、300メートル四方の規模を誇っていたことが判明している。また、2世紀初頭のハドリアヌス帝の時代に再建された可能性が高い。

●灌漑施設も完備していた兵舎周辺

 遺跡が発見された現在のサン・ジョヴァンニ地区は、古代ローマ時代は首都の郊外であったため当時は果樹園が広がっていた。当時は建設されていなかったアウレリアヌスの城壁方面に向かってわずかに傾斜している丘に建設されていた兵舎の足下には、川が流れていたことも明らかになった。この河川は、兵舎周辺の果樹園のために灌漑し、テベレ川につながっていた。

●五賢帝時代の美術の粋を極めたモザイクの数々

 今回発見された邸宅は、古代ローマ時代の建築の典型で中心に中庭がある。その周辺に14の部屋が確認された。中庭の中心には噴水用の盤があり、想像ではこの盤に水が噴き出す彫刻が置かれていたという。

 見事なのは、邸宅の床に施されたモザイクであった。白と黒のも細工は、「オプス・セクティレ」と呼ばれる当時の最高の技術で構成されている。

 また、部屋のひとつは「暖房」が完備されていたことが煉瓦の積み方で判明しており、当時の技術の高さを証明している。さらに、兵士たちが愛用していた日常の小物、短剣や指輪なども発見された。

●軍事施設が連なる地区

 考古学者や歴史学者によると、現在のサン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂からコロッセオにかけて、古代ローマ時代には重要な軍事施設が連なっており、アンバ・アラダム駅の地下から発見された兵舎もその一つだという。

 兵舎は、271年にアウレリアヌス城壁の建設の開始とともにその機能を失ったとされる。1世紀後半から2世紀にかけての古代ローマ帝国の軍政の研究に、大きな役割を果たすといわれている。

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