関連記事
アサヒ、巨大買収によりビールの本場欧州で急拡大
アサヒビール本社ビル。(c) 123rf[写真拡大]
アサヒグループホールディングスは1月30日、今期(2017年12月期)の業績見通しの2回目の上方修正を発表した。
【こちらも】アサヒビール、台湾に100%子会社設立 マーケティング強化狙う
IFRS(国際会計基準)による売上収益は、当初見通しよりも2,648億円増の2兆848億円(前年比122%)で、事業利益は313億円増の1,963億円(同132%)と大幅な増収増益を見込んでいる。
アサヒビールは、1906年、日本のビール会社が大合同してできた大日本麦酒が第二次世界大戦後の財閥解体により、1949年に分割設立された。分割当初は西日本で展開していたが、全国的な競合の中で1980年代次第に市場占有率が低下し、苦境に陥った。
1986年、住友銀行出身の樋口廣太郎が社長に就任しアサヒスーパードライを大ヒットさせ、V字回復を達成し、1998年にはビールの国内シェア1位を奪回した。その後キリンが2011年にブラジルで3,000億円の買収、サントリーが2014年アメリカで1兆6,500億円の買収を行っていたのに対し、アサヒは足元を固める手堅い経営を続けていたが、2016年10月に英SAB社から西欧4社を3,000億円で、12月にはベルギーのABI社から中東欧5カ国のビール事業を9,000億円で買収し、世界進出へ大きく舵を切った。
巨大買収によりビールの本場に乗り込み、業績を大幅に伸ばしているアサヒグループホールディングスの動きを見ていこう。
■前期(2016年12月期)実績
前期は売上収益が1兆7,069億円(前年比101%)、事業利益が78億円増の1,485億円(同106%)であった。
売上収益から売上原価、販売費、一般管理費を控除した事業利益は、欧州での買収による一時費用超過による18億円の減益を国内の飲料事業71億円、食品事業18億円の増益などによりカバーした。
■今期第3四半期(2017年1-9月)実績と今期(2017年12月期)見通し
1-9月売上収益は前年よりも2,945億円増の1兆5,219億円(同124%)で、事業利益は474億円増の1,541億円(同144%)であった。
実績好調の原因は、売上収益が巨大買収による欧州国際事業の増収2,828億円と飲料事業の増収121億円などによるものであり、事業収益は同じく欧州国際事業の増益417億円、飲料事業の増益65億円などによるものである。
1-9月の好調な実績を受けて、今期見通しは売上収益が2兆848億円(同122%)、事業利益が1,963億円(同132%)を見込んでいる。
■中期経営方針の推進
企業価値のさらなる向上を目指して次の施策を推進する。
1.国際事業でグローバルプレイヤーへの挑戦
・買収した欧州事業の強化を目指して欧州事業を統括する欧州統括本社を置き、西欧事業と中東欧事業を中心にスムーズな事業統合とシナジー創出を目指す。
・オセアニアでは、成長する水市場、サイダー市場で着実にシェアを伸ばし、スーパードライの売り上げ拡大を推進。
2.主力事業で高付加価値品を軸とした強いブランド創出、価値競争のリーダーシップ確保
・酒類事業はビールを強化し、低アルコール飲料とノンアルコールのシェア拡大。
・飲料事業は三ツ矢サイダー、十六茶、カルピスなど主要6ブランドに集中したマーケティング戦略とトクホ、機能性表示健康領域強化。
・食品事業は主力ブランドのミンティア、ディアナチュラなど主力ブランドの成長と収益構造改革の推進。
買収により欧州事業が急拡大する中、グローバルプレイヤーを目指すアサヒグループホールディングスの動きから目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)
スポンサードリンク